サイトアイコン 筑波技術大学ウェブマガジン

ありのままの自分を受け入れ、励ましてくれる人たちがいる

ありのままの自分を受け入れ、励ましてくれる人たちがいる

Q1.松谷さんは卒業後、本学のリカレント教育に携わっていますが、現在のお仕事について教えていただけますか?

大学院を修了後、本学で事務補佐員として、日本財団助成事業「聴覚障害者のためのキャリアサポートセンターの設置」における、事業の推進に関わる事務作業等に従事しています。

これまでに携わった業務の内容は、聴覚に障害のある社会人を対象としたイベントや講座の参加者受付やオンライン配信等の運営補助、ホームページやSNSによる情報発信、会議の議事録作成などです。また、本学に在籍している盲ろうの事務職員の就労支援にも携わっています。

 

Q2.今年大学院を修了されましたが、在学中特に充実していた学びの経験がありましたら教えてください。

在学中で特に充実していた学びの機会は、障害学生支援コーディネーター実習という講義で、他大学の障害学生支援室で実習をさせていただいたことです。コーディネーターの先生方や支援者の方々、障害学生や支援学生の皆さんと関わる中で、これまで自分が抱いていた障害に対する固定観念や、障害学生支援の在り方について、考え直す機会をいただきました。

教育実習中の模様

他大学2校でそれぞれ1ヶ月間実習をさせていただきましたが、実習中は、常に障害学生支援について考えることができ、とても充実した時間を過ごすことができました。

また、大学院では「軽度・中等度難聴者、中途失聴者のきこえ」をテーマに研究を行っていました。研究をする中で、研究内容だけでなく、自分が当事者であることから自分のアイデンティティに悩むことが多々ありました。ですが、在学中にアルバイトをさせていただいたPEPNet-Japanを運営しているT-TAC事務局の先生方と職員の皆さん、そして大学院の同期・先輩・後輩たちに支えられながら乗り越えることができました。


Q3.学部時代に熱中したことや取り組んだことがあれば教えてください。また、在学中はどのような学生でしたか?

家が裕福ではなかったため、奨学金をいただき、居酒屋でホールのアルバイトをしながら、講義に出席し、サークルや趣味でストレスを発散するような日々を過ごしていました。教職課程との両立は厳しいものがありましたが、なんとか高等学校教諭一種(工芸)を取得することができました。在学中は、あまり自分の意見を言えず、内気な性格だったと思います。ですが、そんな自分を支えてくれる先輩・同期・後輩・そして友人たちと出会い、忙しくも充実した学生生活を送ることができました。

卒業研究の制作風景

卒業研究では、オノマトペをイメージしたテーブルウェアの制作研究を行いました。工芸に関する知識と技術を高めるだけでなく、忍耐力を培う経験になったと思います。先行研究の調査やアンケート調査の結果をもとに、「雨」、「風」、「日光」、「雷」のオノマトペをイメージした制作物のアイデア展開とペルソナの設定、制作を行いました。4つのテーマに合わせて、ガラス、白磁、陶土、板金といった異なる素材や異なる技法を用いて制作を行うことは容易なことではありませんでした。アイデア展開では何度も案を考え直し、制作では試行錯誤を重ねました。

研究の過程が一朝一夕にはいかないことで、自分の不甲斐なさを痛感し、へこんだりしましたが、指導教員の先生方に、休日や平日の夜遅い時間までご指導・ご助言をいただき、4種のテーブルウェアの制作を達成することができました。

教職課程やアルバイトと並行しながら研究を進めていくことは自分にとって非常にハードルの高いものでしたが、卒業研究で得ることのできた達成感は、今の自分の原動力になっていると感じます。


Q4.大学生活を続けて行く上で大変だったことはありますか?また、どのように乗り越えたか教えてください。

学生時代の友人たちとの一枚

学部時代は、学業とアルバイトを両立させることが大変でした。正直、アルバイトに根を詰めすぎて講義でダウンしていたこともあったと思います…。学費を払って講義を受けているのに本末転倒ですね…。せめて最低限、課題は自分が納得いく結果を出すこととと、提出日までに提出することを意識していました。

また精神的に辛くなった時は、空き時間を作って遠くまでツーリングに出かけたり、体育館に行って一人でバスケのシュート練習やトレーニングをしたりして、気持ちをリセットするようにしていたのがよかったのかもしれません。


卒業研究の展示風景

大学院では、自分のやりたい分野の専攻に進めたとはいえ、学部とは全く異なる分野に進んだので、専門用語が分からず頭を悩ませることも多かったです。特に統計が大の苦手で、べそをかきながら研究を進めていました。

苦しいことも多かったですが、学部時代の友人や大学院の先輩、同期、後輩、そして先生方に悩みや不安を聞いてもらって、気持ちを発散したり解決方法を教えてもらったりして、なんとか乗り越えることができました。


Q5.最後に、現在の松谷さんを形作っているものや自分をつき動かす信念についてお伺いしてもよろしいですか?また、在校生や受験生にアドバイスがありましたら合わせてお願いします。

小学校高学年から次第に聴力が落ち始めたり、高校では聴こえにくさからコミュニケーションがうまく取れないことで精神的に辛い時期が長くあり、全日制高校から定時制高校(夜間)に編入したりという経験がありました。そのこともあって、心の奥底では人と関わることが怖いという気持ちがありました。しかし、今までを振り返ってみると、ありのままの私を受け入れてくれたり、心が挫けた時に励ましてくれたりした人たちがいたからここまでやってこれたのだなと感じます。

今年から社会人となりましたが、組織の一員としての自覚を持ち、周囲への感謝を忘れずに、これからも邁進していきたいと思います。

自分は特段優秀なわけでも、人に誇れる才能があるわけでもありませんでした。これまで大きな壁にぶつかった時、意地で乗り越えた部分や、周りの人に支えてもらって乗り越えた部分が大きいです。

在学生や受験生の皆さんも、今後、大きな壁にぶつかったり、周りの人と自分を比べて自己嫌悪に陥ってしまうこともあるのではないかと思います。ですが、辛いときは自分一人で抱え込まずに周りの人に吐き出したり、好きなことをしたり、趣味やスポーツに打ち込んで気持ちを発散したりして、自分の人生の中で幸せを感じられる日を少しでも増やして欲しいなと思います。

モバイルバージョンを終了