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技大で得た知識と経験を胸に、今の自分にできる事を精一杯やり遂げたい。

技大で得た知識と経験を胸に、今の自分にできる事を精一杯やり遂げたい。

Q1.筑波技術大学(以下、技大)、そして鍼灸学専攻を選んだきっかけについて教えていただけますか?また学生生活はどうでしたか?

大学院生室で和やかに話す井上さん

私は小学生のころから医療に関わる仕事がしたいと思っていました。そして、スポーツをすることが好きだったことから中学ではスポーツトレーナーにも興味を持ち始めていました。しかし、低下して行く視力と、自分がやりたいものとの間で葛藤し苦しい思いをしていました。このような悩みを抱えていた高校生の時、当時の部活の先生から理療科に行くことを勧められました。そこで鍼灸について調べるうちに興味を持ち始め、高校卒業後は鍼灸を学ぼうと心に決めました。

鍼灸を学ぶ進学先として、通っていた盲学校の理療科にそのまま進学することを勧められましたが、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家試験受験資格と学士の両方を得られることや、技大の情報システム学科に進学した先輩から聞いた楽しいキャンパスライフの話等に興味を持ち、鍼灸学専攻を受験することを決めました。

学生生活は、大変なことも多々ありましたが、それも含めて学業・私生活共にとても充実した4年間を過ごすことができました。学業においては、まず実習について、保健科学部附属東西医学統合医療センター(以下、医療センター)にて実際に患者さんへの問診をはじめとする診療補助を行ったり、医師の診療の見学をさせていただいたりと、学部生のうちから実際に医療現場を体験できるという、技大ならではの特権を得られました。また、地域のボランティア患者さんに問診を行った上であん摩や鍼による施術をさせていただく診療型実習もありました。

研究データの整理や修士論文を執筆している様子

座学の授業では、定期的に訪れるテストの勉強に追われると同時に、実習のレポートの提出期限が迫ってきて・・・、など毎日何かしらに縛られていましたね。そんな日常の中にあった友達と楽しく過ごす時間が、私にとって一番の幸せな時間でした。「楽しく勉強をしよう」をモットーに、経穴(所謂、ツボ、と呼ばれるものの正式名称で、身体の表面にあり、鍼や灸などを施す場所のこと)の替え歌を作って大笑いしながら覚えたことが印象に残っています(笑)。

その他には、土日に大学から2kmほどの距離にあるショッピングモールまで歩いて買い物や映画・お茶などに行ったり、寄宿舎で一緒に食事を作って食べたりもしました。今となってはどれもが良い思い出です。

 

Q2.大学院進学の動機は何ですか?

4年生になり卒業後の進路を具体的に考え始めた時、このまま卒業し就職して治療を施していけるほどの知識がまだ自分には不十分だと感じていたので、就職ではなく、学ぶ道を選びました。そこで、大学院を受験するか医療センターにある鍼灸外来の研修生制度に応募するかを悩みましたが、臨床及び学業の両方を学べる大学院に進学することを決めました。

大学院では論文作成等文章を書く機会が多くあるので、文章作成が苦手な私にとっていい訓練になると感じたことも、大学院進学の理由の一つです。

 

Q3.大学院での研究や生活はどうですか?学部学生の時との違いはありますか?

鍼灸施術所で患者さんに問診をしている様子

大学院の研究テーマは、音声ユーザー用の東洋医学用語解説教材を試作し、実用性について検証することです。きっかけは学部生の時に、鍼灸学の科目の中でもより複雑な東洋医学用語を、タブレット端末で簡単に検索して学習できる教材を試作している先生がいらっしゃり、私もそれを勉強時に使用したかったのですが、それは弱視者用に作られており、私たち音声ユーザーが使用するのは困難な教材でした。それを改善し、後輩たちにより良い学習環境を提供してあげたいと思ったことが、今の研究テーマを選んだきっかけです。

大学院で一番苦労しているのは、学期末ごとにある研究の進捗状況などを発表する報告会の原稿作成です。私は人前で話すのは得意なので本番に問題はないのですが、この通り文章を書くのが苦手で苦手で…。毎回、担当の先生にご指導を頂きながらなんとか達成しています。研究に携わって、作成した教材を学部生に協力していただき、自主学習における有用性を調査した際に、「これ、勉強にすごく使える」と感動の声を上げてくれたことが一番嬉しかったです。

研究以外の楽しみは、医療センターの研修生との時間でしょうか。大学院生は学部生と比べて医療センターでの実習時間が長いため、研修生との交流が深められます。研修生は幅広い年齢層で全国各地から来られていて、卒業した学校も、されてきた経験も様々です。鍼灸以外でもいろいろな話が聞けて自分の視野が広がっているのを感じられています。

大学院生と学部生との大きな違いは、自分でスケジュールを立ててそれに沿って研究活動を行うことですね。学部生は時間割に沿って講義や実習を受け、指示に従って課題のレポートやテスト勉強をしていれば日々を過ごせました。ところが院生の決められた授業は、集中講義や実習のみで、あとの空いた時間を研究活動に使うのですが、自分からやることを決めて進めないと誰も何も指示を出してくれません。最初はそれに慣れずに無駄な時間を過ごしてしまいましたが、入学して半年ほどしてようやっと慣れて、自ら計画を立てて行えるようになりましたね。


Q4.今後の目標を聞かせてください

まずは修士論文を提出することです。卒業後、私は6年間お世話になった技大を離れ、一社会人として巣立っていきます。学部生及び院生の6年間で学ばせていただいた、臨床及び文章スキル等を生かし、4月からの職場であん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師として頑張っていきます。4月からは、障害のある方に生活リハビリテーションを行う施設で治療者として勤務することが決まっています。これからの目標は、利用者さんの苦痛を感じている部分に寄り添い、その苦痛を一つでも取り除き、生活の質を高めてあげられる、そして、関わった皆さんを笑顔にできる治療者になることです。

 

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