(Q1)まず、自己紹介をお願いします。
大石悠介(おおいし ゆうすけ):総合デザイン学科3年生です。クリエイティブデザイン学コース在席で、イラスト、ロゴ、ユーザインタフェース、デザインについての考え方、レイアウトなどを学んでいます。
吉岡蛍佑(よしおか けいすけ):産業情報学科3年生です。普段は情報科学、プログラミングやソフトウェア設計などを学んでいます。
松永和真(まつなが かずま):産業情報学科3年生です。支援技術学コースで、普段は情報保障について、支援システムについて学んでいます。
松風雛多(まつかぜ ひなた):総合デザイン学科3年生です。大石さんと同じくクリエイティブデザイン学コースに在籍しています。
(Q2)チーム内での、それぞれの担当について教えてください。
大石:全体の代表を務めています。
吉岡:ゲームのプログラミングを担当していて、主にUnityで組んでいます。
(註:Unityとは、ゲームエンジンのこと。ゲームを作成するためのツールを提供するリアルタイムコンテンツ作成プラットフォーム。)
松永:会計・グッズ・サポートを担当しています。状況に応じて、ユーザ視点からの監修も行っています。
松風:背景、キャラクターデザイン、イラストの担当です。今回のインタビュー用のポスターも私が制作しました。
(Q3)チームを結成するまでの経緯を聞かせてもらえますか?
大石:元々僕がゲームを作りたいと思っていました。僕は、絵は描けてもプログラムが組めないんです。なので実際に作るのは無理かなと思っていたんですが、噂で吉岡さんがプログラムを組めると聞いて、「デスクワールド」のアイディアを話してみました。それで意気投合して、まずは二人でゲーム作りを始めました。
そのゲームを2023年度の学園祭で出展することになり、展示スタッフが必要になったんですが手が足りなくて、松永さんがヘルプで入ってくれました。そこから松永さんも会計として関わってくれて、今後はグッズ展開も予定しています。
しばらく3人で活動していて、製作のメインは僕と吉岡さんの2人でやっていました。その中でビジュアルは全部僕がやっていて、作業量は多いのに人手が足りなくて。そこで僕と同じ専攻の松風さんも誘ってみました。もともと、松風さんの作風や作業の様子を見て、「ここまで細部にこだわって絵が描けるのはすごい」と思っていたのもあって。
松風:初めて聞いた(笑)。私は2023年度の学園祭を通して3人の活動は知っていて、前から興味もありました。「ここまでできるなんてすごい!」って思いながら見ていました。そしたらその後、「うちに来ないか」ってまるでスカウトみたいに声かけられて(笑)。誘ってもらった時は嬉しかったです。そこからメンバーになりました。
(Q4)結成して、まず何をしましたか?
大石:まずは僕のアイディアを吉岡さんに形にしてもらうところから始めました。僕が絵を描いて、Blenderで3Dモデリングを作ってキャラクターデザインを仕上げ、アニメーションまで付けて吉岡さんに渡しました。
(註:Blenderとは、3Dモデリングやアニメーションなどの作業を行うソフトウェアのこと。)
吉岡:そこから僕がキャラクター、背景をプログラミングでゲームの形にまとめていく作業をしました。最初、第1弾の「デスクワールド」を制作したんですが、ゲームの中でいろいろと気になるところがあって、第2弾は「デスクワールド」をリメイクしようということで今の形になっています。
松永:ゲーム制作を進めていく上で、意見がほしいと言われた時に僕からユーザとしての意見を出したりしました。
(Q5)絵に関する役割分担はどのようになっていますか?
大石:僕が世界観からキャラクターまで全て描いています。松風さんが入ってくれた後は、背景を僕が途中まで描いて、松風さんに仕上げてもらっています。
松風:もともと自分はゼロから作っていくタイプで、人が作ったものを途中から引き継ぐのは経験がなかったんです。実を言うと、最初に声をかけられた時はもう少し絵を描くボリュームが多いのかなと思っていたんですが、実際入ってみたらそうでもなかったので「あれ?」と思いました(笑)。加えて、背景は自分の中では実は苦手な分野なんです。普段はキャラクターを描いているので慣れるまで戸惑いもあったけれど、苦手なことだからこそ自分の幅を広げるチャンスと思って挑戦してみました。やってみて良かったです。
(Q6)普段のチームの様子はどんな感じですか?
大石:普段はLINEで連絡を取り合っています。メンバーの都合が合わないことも多いので、必ずしも毎日顔を合わせているわけではないです。
松風:私が実家から通っていて通学に時間がかかるのもあります。
(Q7)制作したゲーム「デスクワールド」について教えてください。
大石:主人公のマエルドが昼寝から目を覚まして、お祭りの準備をするんです。そのときに、オモチャが襲いかかってきて、何とか追っ払うことができたけど、その後に事故が起きて、仲間のニンギョウがデスクの外に飛び出してしまいます。残ったマエルドが、仲間を探しに行く話です。
松風:オープニングの絵は私が担当です。
大石:詳しくは、ぜひ、今年の学園祭で実際にプレイしてみてください(笑)。学園祭は、10月20日日曜日、9時半から18時までです。その間はずっとゲームを展示しています。皆さんぜひ来てください!
(Q8)皆さんのチームには、グループ名はないのですか?
大石:今はありません。
松風:特に決まっていないので、私たちのことを言い表す時は「あつまり」って言ってます(笑)。
(註:その後チームで話し合い、「ドリーム クリエイターズ」略して「ドリクリ」となったそうです。)
(Q9)制作費用はどれくらいですか?
吉岡:アセットを購入した程度です。アセットというのはゲーム開発で使う素材集のことですね。このゲームでは制作作業時の読み込みを早くするために使用しました。
(Q10)「デスクワールド」の公開予定はありますか?
松風:まだ「こうしよう」というのは決まっていなくて、いったん保留にしています。
松永:グッズについてもまだこれからなので、会計的にも今の時点ではまだ何も、という感じですね。
大石:まずは学園祭で公開して、そこでたくさんの人に遊んでもらいたいです。
吉岡:その後は一般向けに公開できたらいいなとは思っています。Webでの公開か、Nintendo Developer Portalに登録してSwitchでリリースするか。
なるほど。将来ゲームの中で皆さんのお名前を見かけて驚く日が来るのが楽しみです。
(Q11)今回のポスターは、インタビュー用に作られたんですよね?詳しく教えてください。
松風:ポスターは私が描きました。今回は自分が普段描いている絵柄とは異なっていて、実はちょっと苦手な絵柄だったんですがやってみました。大石さんとバチバチしながら進めました(笑)。チームのグループLINEで「こうしたい」「もっとこっちの方がいい」みたいに、かなりストレートに意見をぶつけ合いました。そこで十分話し合えたので、自分たちの成長にも繋がった気がします。
松永:見ている方としては、専門的な話をしているからアドバイスはできないなと思いつつ、素晴らしいなと思いました。リアリティを追求して細部にもこだわって。自分だったらそんなに細部にはこだわらないから、そこまでやれるのは素晴らしいなと。基本的には話し合っている本人たちに任せて、自分たちは見守りのスタンスでいました。
(実際にゲームを動かしながら)
(Q12)ゲームの推しポイントはどんなところですか?
大石:何よりもこだわったのは、ストーリーよりも世界観でした。キャラも背景も全部丸くして、シンプルなデザインにしました。その方が作る作業が面倒にならないから、というのもあります(笑)。あとは、おもちゃ達の動きもこだわりポイントです。
吉岡:遊ぶ人には、世界観もそうですけど戦闘システムも見てほしいです。作る時に僕が一番こだわったところです。このゲームでは3体のキャラクターを操作するんですが、自分で操作するキャラ+CPU2体の中で自分が操作するメインキャラを入れ替えることができます。それぞれのキャラが必殺技を3つずつ持っていて、それらを組み合わせることで戦略性を持たせることができるようになっています。今はまだ実装できていませんが、今後アイテムも使えるようにして、もっと複雑なシステムにする予定です。
松永:ジャンプが特徴的だよね。フワッと浮くような動きで、あれはすごいセンスあるなと思った。
大石:ふんわりした動きを持たせたくてこういう動作にしました。まずはBlenderで3Dモデルを作り、跳び上がるアニメーションまで作成して吉岡さんに渡しました。
吉岡:受け取ったジャンプのデータは全部で70フレームあったので、プログラミングで使いやすいようにカット、調整し、実際に動くようにしています。最初のタメの部分、ジャンプの頂上までの部分、一番上から落下する部分、のようにパートで分けて、そのアニメーションをプログラミングの中に入れ、アニメーションのモーション同士をつなぐステートマシンで管理できるようにしました。こうすることでプレーヤーにとって自然な感触でジャンプができるようになっています。
(Q12)素人が聞いていても十分すごいです。ゲーム制作には大学での学びが生きていますか?
吉岡:正直、大学での学びはゲーム制作に直接つながってはいないです。やり方をネットで調べたり、みんなの意見を反映させたりして作りました。プログラミングの考え方については授業で習ったものが役に立ちました。実は、僕は高校の時からプログラムを組んでいて、高校生の時は一人でゲームを作ったこともあるんです。ここまで本格的に作ったのはこのチームになってからですね。
松風:大学で習った技術以外でここまでやれているのはほんとすごいと思う。
松永:Unityは3年生の授業で習いますが、僕は専門ではないので取らないんです。僕からすると、こういうことができるのはほんとすごいです。プログラム言語というのはいくつかあって、それぞれの言語を知らないとプログラムを組むことはできないんですね。僕はUnityに関しては素人なので、Unityでこういうことができるっていうのは本当にすごいなと思います。
(Q13)Blenderは授業で学んだのですか?
大石:授業では習っていません。高校の時に「3Dモデルを作ろう」という内容の授業があって、そこである程度使ったことはありましたが、その後は独学で使えるようになりました。ただ、大学の授業で3D CADは習っていて、Blenderとはまた違う3D製品の作り方を学んでいます。
なるほど、Blenderとはまた違った形で3Dに慣れる経験ができたのですね。
吉岡:大石さん、ボーンの作り方とか、全部インターネットで調べて勉強してましたね。
(Q14)周りの学生はチームの活動を知っていますか?
松風:知名度が低いので、学園祭などを通して知名度を上げられたらなと思っています。今はインスタで活動していますが、まだまだこれからですね。
(Q15)チームでの活動で、一番思い出深いエピソードは何ですか?
大石:やっぱり、人生で初めて自作のゲームを公開できたことです。学園祭に来てくれたお客さん、つまり知らない人たちにゲームを公開するって今までになかったことなので。
吉岡:僕は高校の時に経験がありますが、大石さんにとっては初めてだもんね。
大石:高校生で公開ってすごいよね。
吉岡:高校の時は1人で作っていました。本格的なものを作ったのは2023年の学園祭が初めてです。1人で作ると独りよがりになりがちで、自分ではこれでいいと思ってしまう。チームだと他の人に見てもらうことでフィードバックがもらえたり、いろいろな気づきが得られたりしてありがたいなと思います。
松風:私は、一番思い出深いのはバチバチしたことですね(笑)。もともと4人の結束があったので、その関係性だからこそ言えたのだと思います。4人の性格がうまく噛み合ったのもありました。
吉岡:もともと4人とも、はっきり言う性格ですし。
松永:そうですね、僕もはっきり言うタイプです。
吉岡:松永さんが一番はっきり言いますよ(笑)。
松永:ダメ出しの時はすごくはっきり言いますね。例えば、動作がおかしいなと思ったらやり直した方がいいとか、イラストも、色が見えにくかった場合に色の変更を提案しました。
大石:やっぱり、アドバイスがあった方が良いものを作れると思うので、フィードバックは絶対に必要ですね。
吉岡:アドバイスを受けて変わる時もあるけど、メンバーが納得しなかった時はまた違う人の意見を聞いて改めて提案したりすることもあります。
(Q16)提案しても反映されなかった時、どうして納得してもらえないの?って思いますか?
大石:めっちゃ思います(笑)。そういう時は、メンバー以外でゲームをよくやる人を連れてきて、その人を交えて話し合って説得します。
吉岡:世間一般に向けて公開するものなので、他の人の価値観も大事にして取り入れるようにしています。
大石:「ほら、(自分以外にも)こういう意見があるよ」的に。
松風:ちょっと圧力かけにいくんだよね(笑)。
(Q17)将来の夢を教えて下さい。
松風:まだはっきりと決まっていないんですが、3Dプログラミングをやりたいです。大学ではデザインを学んでいますが、今独学で3Dの勉強を進めています。それを活かして、来年の卒業制作では1人で全部作って出品したいですし、就職活動でも企業にアピールしたいなと思っています。なので、この活動にはすごく助けられています。卒業制作でどんなことをやるかまだはっきりと決めていないのと、自分が何を分かっていないのかがまだ掴めていないので、やることが決まり次第メンバーにもアドバイスをもらいたいなと思っています。
大石:僕は、このゲームのことがあるからというのもあるんですが、ゲーム会社に入りたいです。ゲームにこだわらず、作品の世界観を作る仕事がしてみたい。なので、ゲームだけじゃなく、漫画、アニメ、どれにも携われる会社で世界観を作る仕事をするのが夢です。大手でこれらを手掛けている会社はたくさんあります。僕も将来そういう仕事をしたいと思っています。
このゲーム作りの活動がすごく役立ちそうですね。将来、発売されたゲームソフトを見て大石さんの名前が入っているのを見て「おおー!」となりたいので、ぜひ頑張ってください(笑)。
吉岡:将来の夢、はっきりとは決まっていないんですが、ホワイト企業に入るのと(メンバー:笑)、ゲームに限らずモノ作りが好きなので、できればプログラミング方面でやりがいのあるモノ作りを楽しくやれたらいいなというイメージでいます。デスクワールドの製品化についても、例えばこれをゲーム会社に持ち込んで委託してもらうというのも(実現できたら)面白そうだなと思います。
大石:僕も思ってる。
吉岡:ゲーム会社に気に入ってもらえて、続編というのが見えてきたらいいですね。
松永:僕は、支援システムを作ってみたいです。高校の時から、社会の役に立てることをやってみたいなと思っていて。最初は、プログラムで何かできたらいいなと思っていたんですが、大学に入ってみたらプログラム苦手だなと気づいてしまって(笑)。それでも、支援システムで障害のある自分ならではの意見を出して、世の中の障害のある人の役に立てたらいいな、そういう仕事をやってみたいなと思っています。まあ、このゲームには支援技術の視点は全く入っていないんですけど(笑)。
大石:(ゲーム作りを通しての)スキルは(将来の仕事に)役に立つんじゃない?
松永:そうですね、意見の出し方とか、そういう経験が役に立つと思います。
吉岡:支援技術を活かしたゲームだったら、例えば聴覚障害を周りに伝えるゲームとか?
松永:聴覚障害、その他の障害、幅広く障害のある人の役に立てるような仕事がしたいですね。
(Q18)ゲーム作りに憧れる、全国のきこえない・きこえにくい小中学生・高校生にメッセージを!
大石:一言で言うなら、「やりたいと思ったことは絶対やれ!」です。「これやりたいな」と思っていても、「自分には無理だよ」って諦めることって多いですよね。でも、やっぱり好きなことなんだから、やりたいって思ったらすぐにやった方が良いと思うんです。僕も、ゲームは作りたいけどプログラムが組めないせいで諦めかけていて、でもこの大学に入って吉岡さんと知り合ったからプログラムを書いてもらえた。諦めないで続けられた。だから、やりたいって思ったら諦めずにやってみてほしいなって思います。
吉岡:まずは何かを続けることが大事ですね。何か一つ深掘りする。そういう人材の方がこれからの社会は需要があると思います。ゲームでも、色んな分野を全部やるのは大変なので、自分の興味のあるところを選んで突き詰めていく。企業もそういう人材を求めているだろうと思います。
高校からプログラミングを続けている吉岡さんからのコメント、説得力がありますね(笑)。今日はどうもありがとうございました!