こんにちは。学生記者の髙橋理子と申します。
今年は、昨年から引き続いての私と松永くん、そして新たに加わった4人の計6人で内容を練り上げ、UD研修に行ってきました。4年生がほとんどだった昨年と異なり、新メンバーは2,3年生を中心に募集しました。昨年よりも人数は少ないですが、6人のメンバーが集まりました。
はじめてメンバーがそろって会議を行ったのは夏休みに突入した8月上旬。帰省中の人もいたので、対面とオンラインのハイブリッドで行いました。昨年と同じく、ろう・難聴者について説明する担当と、コミュニケーション方法を説明する担当に分かれて作業を進めていくことになりました。メンバーには手話だけを使う人、手話と口話を使う人、口話だけを使う人がいて、資料や内容を作り上げていくにあたり十分な多様性や意見を取り入れることができました。
もちろん、すべて順調とはいかず、作成していたパワーポイントのデータが消えてしまって作り直したり、リハーサルが本番の前日であったりして後半はかなり慌てながら作業する羽目になりました。それでも、全員が一体感を持って取り組んだおかげで無事に当日を迎えることができました。
【当日の様子】
当日は早朝6時に起きて全員で大学前に集合し、迎えのバスを待っていました。夏休みに入ってからは遅い時間に起きていたのでこんなに早く動き出すことはなく、久しぶりに朝日を見たようで、気持ち良かったです。
全員寝坊せずにすんだのに、バスが全然姿を見せず、結局集合時刻から25分も経ってようやく現れました。そのせいで市役所で準備をする時間があまりなくなってしまったのは痛手でした。
到着後は、開始の時間が迫っていたため、部屋のレイアウトや発表の最終確認などを急ぎつつも、漏れがないように確実に進めていきました。ですが、問題がもう一つ。手話通訳との事前相談を行う時間がほとんど取れなかったのです。手話で聴者に講演を行うときは通常、手話通訳を手配する必要があり、私たちが話すときは手話を音声に、逆に聴者が話すときは音声を手話に通訳してもらいます。本来であれば、内容や使用する用語、進行等について通訳者との打ち合わせが必要なのですが、既に研修の他の講演の通訳に入っていたため、仕方なく打ち合わせなしでスタートすることになってしまいました。私たちは通訳に齟齬の出ないよう、手話の表出スピードに細心の注意を払いながらお互いに協力し合い、何とか初回の講演を終えることができました。
私たちが担当した体験講座では、4グループにそれぞれ同じ内容の講座をローテーションで行います。初回が終わったばかりなのに、朝からバタバタしていたせいか、あと3回も残っているのかと思うと一同ドッと疲労感に襲われました。
なので、自分の担当ではないパートのときはこまめに休憩しようかという話にもなったのですが、結局、参加者が理解できているかの確認や、写真撮影などこまごまとやることがあって、それも叶いませんでした。それでもメンバーの気遣いやサポートに助けられ、良いチームワークで無事にすべての講座を終わらせることができました。
【講座の内容について】
私たちは、まず「ろう・難聴とは何か?」について説明し、次に「ろう・難聴者とのコミュニケーション手段」について説明と実践を行いました。
初めは、昨年までの「聴覚障害者」という表現を今年も踏襲しようと思ったのですが、つくば市聾者協会との事前打ち合わせで「ろう・難聴者」が良いのではないかとご提案いただきました。今回は本番までの時間が短く変更には至りませんでしたが、来年に向けてしっかり引き継ごうと思いました。
耳の構造や医学的な聴覚障害についての説明だけではなく、ろう・難聴者にしか分からない感覚や聴者との違い、よくある偏見などに加え、聴者でも起こりうるイヤホン難聴についての説明を行いました。
難しかったのは、初めてろう・難聴者についての講座を受けてもらうとき、どんな説明が一番わかりやすいか、何を理解してもらうことを優先するのかという点でした。職員の皆さんの中で、これまでろう・難聴者と出会ったことがあるという人もほとんどいませんでした。
メンバー内で検討した結果、昨年と説明の比率を変え、ろう・難聴者のニーズや支援についての考えはひとりひとり異なり、多様かつ様々であるということの説明を増やすことにしました。例えば、育った環境や経験によってコミュニケーション方法は異なるということ。ろう学校出身の場合は手話をメインとしている人が多く、一般校出身の場合には必ずしもそうではないこと、また、聴覚障害の程度が軽くてもあえて声を出さず、手話だけで生活している人もいるということなどです。
これらの説明は、聴者にはなかなかピンとこなかったかもしれません。そもそも聴者は、聞こえない・聞こえにくいことによるコミュニケーションの壁や困難を感じた経験がない人が多いためです。なので説明や構成を工夫することで少しでも、また参加者の中でたった一人でも良いので、ろう・難聴について理解してくれたら嬉しいとの思いで臨みました。
コミュニケーション方法の説明は、ろう・難聴者の様々なニーズに合わせたコミュニケーションを体験してもらえるように、実践的なロールプレイング形式で行いました。まず、コミュニケーションに用いられることの多い、口話、筆談、音声認識ソフト、手話通訳について会話の仕方を実演しながら説明し、実際にろう・難聴者が市役所に来たとの想定でロールプレイを行ってもらいました。
職員の皆さんの様子を見ていると、まず何から始めたらいいのかわからず戸惑っていて、スムーズな流れに導くためのサポートに少し苦労しました。それでも、職員の皆さんは真剣に私たちの話を聞き、また興味を持って様々な質問を投げかけてくれました。それは「家族の中で一人だけ聞こえない状況で辛かったこと」や「ろう学校で育ってよかったこと」など、市役所の業務にこだわらない、幅広い内容でした。
講座の最後には、講義を通して少しでも興味を持ってくれた人がいたら、といくつかイベントを紹介し、さらに、ろう・難聴者の来客があった際には積極的に応対してくれると嬉しく感じるということをお伝えしました。
【学生スタッフの感想】
[聴覚障害に関する説明]
〔水内 樹〕
今日は実際に市役所の職員の方々と会話をしてみて、自分の聴こえなさを伝えることはなかなか大変なことなのだなと感じました。自分は難聴なので、聞こえる時と聞こえない時があって、そのタイミングがあってそれをどう伝えていけばいいのかというところが難しかったです。しかし、例えば、固有名詞や知らない言葉に関しては、聞き取りにくいのだなという風に伝えることが出来ました。口の形をハッキリと喋ってもらったり、筆談をしてもらったりしてほしいというところを伝えることが出来ました。そこは自分としてはすごく良い経験になりました。ありがとうございました。
〔吉岡 蛍佑〕
本日、市役所で発表、ということで少し緊張しました。しかし、実際に話してみて相手の方もきちんと筆談や自分に合ったやり方について提供してくれたため、自分もすごく話やすかったです。相手の方から積極的に話題を出してくれたのもあり、市役所の職員さんとコミュニケーションを取るのはとても楽しかったです。また、自分としても聴覚障害とは何かということを考え直すきっかけになりました。例えば、自分は幼少の頃からどういう風に聴覚障害について考えてきたのかということをスライドで作られている通りに言語化することが出来て、自分はそういう障害があって、こういう対応方法があるのだなと知ることが出来ました。
〔髙橋 理子〕
私はつくばUDを担当して3回目、そのうち市役所での講演は2回目になります。去年、担当したときは先輩がほとんどで緊張して意見をあまり言えていませんでした。今年は同期と後輩が集まり、PPTの内容も遠慮なく変えて、準備からしっかり後輩とコミュニケーションを取ることが出来ていたと思っています。コミュニケーション体験では、スタッフ同士でどういう話をしたか、どういう質問をされたか、などについて楽しく盛り上がることが出来ました。職員さんもコミュニケーション体験の際に積極的に質問してくださったりしたため、会話がすごく弾んで楽しめました。また、課題点もいくつか発見し、それらは来年度以降にしっかりと引き継いでいこうと考えています。
〔徳永 理波〕
初め、参加者の皆さんが音声で話していたので私はその内容がわからず、やっぱり初対面の聴者とコミュニケーションをとることは難しいなと思いました。しかも、最後のコミュニケーション体験の時に、ブギーボード(※)を持っていくのを忘れてしまったのです。本当はブギーボードを使っていろいろと説明したかったのですが…仕方ないのでブギーボード以外のコミュニケーション手段で対応をしました。それがちょっと自分の中では残念でした(涙)最後までしっかりやり切りたかった…でも最後まで大きい失敗は特になかったので良かったです!ありがとうございました。※ブギーボード:繰り返し書いたり消したりできる電子メモパッド
〔藤原 心華〕
実際に参加してみて、分からないことだらけでした。でも、去年の資料を参考にしながら先生方や、つくば市ろう協会の方々にもアドバイスを頂きながら、ギリギリになってしまいましたが、何とか完成させることが出来ました。そして、当日、コミュニケーション体験が結構思ったよりも話が盛り上がって、楽しかったです。また、来年度もあったら同期を誘ってやりたいです!今年は私、2年生1人だけだったし、デザイン学科の人も私だけだったんです!(笑)寂しいので、もっとデザインの同期を誘って一緒に活動したいと思っています。
〔松永 和真〕
つくばUDのスタッフを担当して早2年…。去年は忙しすぎました!今年は割とスムーズに進められたかなと思います。しかし、自分は準備期間中にインターンシップに行っていてあまり準備を手伝えていませんでした。その分の責任と負担が当日を迎えて、重く感じました。特にPPTを修正するところで、他の人に業務を任せてしまったところもあります。それをしっかり反省して、来年度ももしスタッフをやるとしたら役割分担はしっかり平等にするべきだと思いました。当日を迎えて、去年もやっていたからか慣れていて、スムーズに対応が出来たところが良かったと思っています。聴者相手に上手に自分の言いたいことを伝えられたので楽しかったです。ありがとうございました。