日本で唯一の特徴を持つ本学にはまだまだ隠れた魅力があるはず――「自分たちの手で、大学の魅力をカタチにする」そんな想いを持って、学科や専攻の垣根を越えて学生たちが集まりました!
今年度の「産業プロジェクトA」のテーマは大学広報。彼らは最初に自分たちの足元を見つめ直す大学の良い点・改善点の現状分析からスタートし、グループごとに決めたテーマを追いかけてキャンパス内外を奔走しました。広報室長(若月教授)が取り仕切る活動は大学の広報室とも連携して本格的に行われました。取材に関する基礎知識から撮影のコツ、目を引くレイアウトやデザイン、さらには学外のゲスト講師による特別講義まで、多岐にわたる「活きた学習」を実施しました。
今回ご紹介するのは、筑波技術大学の周辺の、ろう・難聴者への理解があるお店にインタビューを試みたグループの、第1回(全4回)です。
第1回では、つくばで創業から25年以上経ち、筑波技術大学の学生に長年親しまれている「井上サイクル」さんへのインタビューをお届けします。
伝える工夫が生む喜び――井上サイクルの情報保障と地域との絆
筑波技術大学の学生に頼られて25年。自転車店「井上サイクル」が繋ぐ地域と心の輪
筑波技術大学の学生に長年親しまれている「井上サイクル」。創業から25年以上、筑波技術短期大学の時代から、聴覚障害のある学生を含む多くの若者の生活を「自転車」を通して支えてきました。
「情報保障」という言葉が一般化する前から、パソコンでの対話を取り入れるなど、誰もが安心して利用できる工夫を続けているお店です。今回は、情報保障への取り組みや地域で果たす役割について、店長の井上さんと社長の間さんにお話を伺いました。
店長:井上さんへのインタビュー
Q. 情報保障への取り組みはいつ頃から始められたのですか?
A. 筑波技術短大の頃からです。当時は「学生たちが社会に出る時に困らないように」という思いから、「まずはメモを持って、自分の意思を伝える練習をしよう」と学生に伝えていました。今はスマホやメールでスムーズにやり取りできていますが、そうした交流を重ねるうちに、自然と今の形になっていきました。

Q. 取り組みを始めてから、お店やスタッフの方々にどんな変化がありましたか?
A. 聴覚障害のあるお客様と深くつながる機会が増えました。口コミや紹介でお客様が増え、「井上サイクルにお願いしよう」と言ってもらえるのが何より嬉しいですね。点検無料などのメンテナンス対応も、安心感につながっているようで好評をいただいています。
Q. 学生さんとのつながりについてはいかがでしょうか
A. 春になると、新入生が親御さんと一緒に自転車を買いに来てくれます。紹介でさらに学生が来てくれて、感覚としては学生の半分くらいはうちで買ってくれている印象です。私たちが続けてきた情報保障の工夫が、しっかり伝わっているんだなと実感します。
大学生や若者へのメッセージをお願いします
A. 筑波技大の学生は少数精鋭です。だからこそ「合格してからが本番」という意識を持ってほしい。社会に出たら、障害の有無に関わらず、「健常者と同じ立場」で活躍していってほしいと願っています。
社長:間さんへのインタビュー
Q. 情報保障の取り組みは、間さんも昔から意識されていたのでしょうか。
A. 25年ほど前からですね。携帯電話が普及し始めた頃、うまく言葉が伝わらないもどかしさを感じることがありました。「どうにかして言葉を正確に伝えたい」という思いから、得意だったパソコンを使ってリアルタイムで文字を起こす対応を始めました。
Q. 現在、お店ではどのような配慮をされていますか?
A.筆談やスマホでのやり取りに加え、口の動きを見て内容を理解できるよう、ゆっくり丁寧な対応を意識しています。また、電話の代わりにメールで連絡を受け付けたり、「マイショップルール*」というご案内プリントをお渡ししたりしています。
*修理の受付手順や代車の貸出規定、連絡先(メールアドレス)などをまとめた案内。聴覚障害のある方や、日本語に慣れていない外国人の方でも、お店の仕組みがひと目でわかるよう工夫されています。


Q. 工夫された点や、苦労されたことはありますか?
A.昔は紙と鉛筆を使っていましたが、今はPCの方が早くて正確ですね。便利なツールはどんどん取り入れるようにしています。
Q. お客様の反応はいかがですか?
A.皆さん喜んでくれている様子で、「ありがとう」と言われることが増えました。店に来やすくなったのだとしたら嬉しいですね。お互いに気持ちよくやりとりができるようになったと感じます。

地域や大学生との関わりについて、今後の思いをお聞かせください
A.学生さん一人ひとりと直接深く交流する機会は限られていますが、この街で生活する上で自転車は欠かせない存在です。そのサポートやメンテナンスを通じて、少しでも皆さんの支えになれればと思っています。
まとめ
「相手に伝えたい」という純粋な思いから始まった、井上サイクルの情報保障。今ではパソコンやスマホを柔軟に活用し、誰もが安心して相談できる環境が整っています。
「障害があっても、大切なお客様であることに変わりはない」という真摯な姿勢。そして「ありがとう」と言われる喜びを原動力に、井上サイクルはこれからも地域と学生に寄り添い続けます。
ライター情報:
穴見 愛椛 総合デザイン学科 クリエイティブデザイン学コース
甲野 謙治 産業情報学科 建築学コース
山本 佑妙 総合デザイン学科 クリエイティブデザイン学コース
大塚 暁子 産業情報学科 支援技術学コース 情報保障工学領域
麻布 咲穂 産業情報学科 支援技術学コース 情報保障工学領域