学びになった10日間：アメリカ研修体験レポート（第3回/全3回）

3月8日～18日、アメリカ・ワシントンD.C.にあるギャローデット大学で研修を受けたり、ワシントンD.C.を観光したりしてきました。参加のきっかけは、主に以下の3点です。
・多様な文化や価値観に触れ、固定観念にとらわれない柔軟な思考力を身につけたい
・米国の情報保障システムや教育環境を学び、日本の教育現場にも応用したい
・聴覚障害児に関する教育・支援法を学び、未来のロールモデルとなる教員を目指したい
 
本連載では、3回にわたってこの研修の内容や感じたことを紹介していきます。
第1回：初のギャローデット大学へ！―ろう者の文化と大学生活の入口―
第2回：ろう教育と支援の最前線―ギャローデット大学での教育・支援に学ぶこと―
第3回（今回）：ワシントンD.C.観光＆国際交流記！
 

第3回：ワシントンD.C.観光＆国際交流記！

 

【ワシントンD.C.の観光】

 

ワシントン記念塔の前での集合写真

ギャローデット大学の見学だけでなく、ワシントンD.C.の観光も楽しみました！
スミソニアン国立航空宇宙博物館、アフリカン・アメリカン歴史文化博物館、リンカーン記念堂、ワシントン記念塔などを訪れ、アメリカの歴史や文化に触れる貴重な機会となりました。
特に、漫画『宇宙兄弟』の影響で宇宙に関心のある私にとって、航空宇宙博物館の見学はとても楽しく、心が躍る時間でした。
どの博物館も一日では回りきれないほど広く、展示も充実しており、「また訪れたい」と強く思えるほど魅力的な場所ばかりでした。
 

【国際交流】

研修中は、さまざまなバックグラウンドを持つ方々と交流する機会に恵まれました。ギャローデット大学内での学生との交流のほか、手話を使って運営されているバー「STREET CAR 82」では、聴者・ろう者を問わず多くの人と出会い、会話を楽しみました。また、現地の方のご厚意でホームパーティーにも招待され、年代や国籍を超えた温かな交流を体験することができました

◆ホームパーティーでの学び

ホームパーティーでは、幸運にもMSSD（Model Secondary School for the Deaf）で教えている高校の数学教員の方と出会うことができました。残念ながら大学併設のろう学校の見学は叶いませんでしたが、この出会いを通して、アメリカと日本の高校数学の扱う分野の違いや、カードゲームを活用した授業の工夫など、教育に関わる貴重なお話を聞くことができました。教職を目指す私にとって、大変参考になる経験でした！
 

◆ バーでの出会い

バー「STREET CAR 82」の外観
また、「STREET CAR 82」では、ギャローデット大学卒業生の方々をはじめ、ろう重複障害児について研究されている方、ろう・聴覚障害児のメンタルヘルスの向上に取り組む方など、多彩な方々と交流しました。言語や聞こえの有無にとらわれず、手話という共通言語を通して心が通じ合う体験に、深く感動しました。今でもその感覚を鮮明に覚えています
 

【留学メンバーの感想】

赤野　芽
 

初めての海外ということで不安もありましたが、アメリカでの経験は新鮮で刺激的でした。特に、ろう文化やろう教育、ろう社会に関する講義の充実度や、授業における情報保障の質の高さ、学内設備の整備状況に感銘を受け、多くの学びを得ました。また、異なるバックグラウンドを持つ人々との交流を通じ、日米の教育方針や考え方の違いを実感し、自身の経験を振り返る貴重な機会となりました。この留学を通して、聴覚障害教育や聴覚障害者への心理的支援についてさらに理解を深める必要性を感じ、未知の分野への探究心が高まりました。今回の挑戦は非常に有意義なものとなり、今後の学びに生かせるように頑張りたいと思います。
 
德永 理波
 

初めての海外留学を経験し、今までにない大きな刺激を受けました。アメリカにおける聴覚障がい者の世界や文化に触れる中で、自分自身の障害について理解が不十分であることを改めて実感しました。また、言語剥奪の問題や聴覚障がい者の社会活動について学ぶ機会もあり、大変勉強になりました。同時に、アメリカにはアメリカの良さがあり、日本には日本ならではの良さがあることも実感しました。そのため、日本だからこそできることがあると考えています。
この経験を通じて、自分が本当にやりたいことを見つけ、それを実現できるよう努力していきたいと思います。
 
柴原 大輔
 

アメリカに行ったのは２回目であるが、その時は幼かった。しかし今回この研修を通して、ギャローデット大学の歴史、そしてワシントンD.C.周辺の有名な建物を観光し、その歴史の話を聞いて、今までない大きな気づきがあった。ワシントンD.C.の歴史を知ることができ、もっとアメリカの歴史やその建物について知ることができた。また、ギャローデット大学では、筑波技術大学とは違い、デフスペースを盛大に取り入れており、エレベーターの壁が透明であり、下からも上からも手話で会話をすることができる。また、座る場所もGのような形になっており、どこから見てもコミュニケーションができるような構造になっていた。改めてみると、日本の良さとアメリカの良さそれぞれあるため、日本にもアメリカの技術を取り入れたらもっと私たちの大学が良くなると思う。それぞれの経験を生かして、今後の学びに生かせるようにしたいと思います。
 
髙橋 理子
 

一言で表すと、今回の10日間の研修は「日進月歩」だった。毎日新しい経験や刺激を受け、自分自身が確実に成長していると実感できた。ギャローデット大学で得た学びは、自分にとって非常に大きな影響を与えてくれた。現在、4年生として就職活動や卒業研究、そして社会人としての準備など、さまざまな判断が求められる時期にある。自分自身の軸が定まらず迷っていた中で、短期留学を申し込んだのは、自分を見つめ直すための大きな一歩だった。そして、それは間違いなく“正解”だったと感じている。
決められたスケジュールをこなすだけでなく、個人的な“気づき”を見逃さないよう意識して過ごした。情報が多く混乱することもあったが、そうした小さな出来事こそが、“発見”や“行動”の第一歩だと捉えている。これからも些細なことを新しい気づきとして受け止め、それがアメリカ、あるいはギャローデット大学とどのように関わるのかを想像しながら、これからも学びを深めていきたい。
 

Q＆Aコーナー

Q1：時差ぼけや留学疲れ、大丈夫だった？
時差ぼけは思ったほどではなかったです！（私は寝るのが大好きなので、アメリカの生活に慣れすぎて、日本に帰ってきたら夜眠れない、、、なんてことはなかったです！笑）
疲れに関しては、アメリカ滞在中は毎日2万歩以上歩いていたのに、テンションが上がっていたせいか、そこまで感じませんでした。でも、さすがに研修最終日あたりは少し疲れが出てきました（笑）帰国してからは一気に疲れが来て、3月末〜4月は体調を崩すことも多かったです…(´；ω；`)
 
Q2：持って行ってよかったもの、いらなかったものは？
持って行ってよかったのは日本食！アメリカの食事が口に合うか心配で10日分持って行ったのですが、実際には3日分くらいしか食べなかったので、そこまで多くなくてもよかったかな〜と思います。
あと、カイロ10日分・マフラー・手袋なども用意していきましたが、ワシントンD.C.は思ったより暖かくて、1回も使いませんでした（笑）
 

【最後に】

今回の研修を通して学んだことを、これから教職に就く者として、日本のろう教育の課題を見つめ直し、改善・向上に繋げていけるよう日々精進していきたいと思います。

第1回・第2回に続き、第3回も長文となってしまいましたが、最後までお読みいただき、本当にありがとうございました！
この連載が、誰かが海外や未知の世界に興味を持ち、一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。