ルワンダのろう・難聴者が就労支援を受けられるカフェのオープンを目指して
卒業生  

ルワンダのろう・難聴者が就労支援を受けられるカフェのオープンを目指して

今回インタビューさせていただいたのは、2021年3月に大学院技術科学研究科(情報アクセシビリティ専攻)を修了した高橋彩加さん。2015年に青年海外協力隊としてルワンダ共和国(以下、ルワンダ)のろう学校で活動されてから、継続的にルワンダでの支援活動を続けておられ、将来的にはルワンダでろう・難聴者が働くカフェをオープンする計画を立てられているとか。その計画プランである「ルワンダのろう者カフェでサスティナブルな就労をサポート」は、大学院在学中にビジネスコンテスト「第17回キャンパスベンチャーグランプリ東京」の大賞にも選ばれました。そんなエネルギー溢れる高橋さんに、ルワンダの魅力や障害学生とともに学ぶ技大での大学生活などについてのお話を伺いました。

Q1.技大に入学したきっかけは?

私は2015年から2年間、青年海外協力隊としてルワンダのろう学校で活動していました。

ルワンダのろう学校に赴任し、そこで初めて手話やろう文化に触れました。聴者(聞こえる人)として聴者の文化の中で生きてきた私には、ルワンダのろう者の手話の表現力や手話言語力、また聴者とは違うろう文化にすっかり魅了されてしまいました。

ルワンダで子供たちとかかわっている様子
ルワンダで子供たちとかかわっている様子

そこで、「ろう教育や手話についてもっと当事者目線で学びたい!」「もっとろう・難聴者を取り巻く世界について多くのことを知りたい!」と思っていた時に、たまたまルワンダのろう学校に、アメリカのNTID(国立ろう工科大学)のチームが訪問に来ました。

その時初めて、世界にはろう・難聴者のための大学があることを知りました。そのNTIDでは聴者も一緒に学べるということを知り、ルワンダでの任期が終わったらNTIDに留学したいと思いました。


ただ、ルワンダ滞在中に色々な場面で、「日本ではどう?」「日本のろう者ってどんな仕事についているの?」「日本のろう教育はどうなっているの?」と、日本人として質問をされることが多くありました。日常生活の中でも、歴史や文化についてのことでも、「で、日本はどうなの?」と聞かれることばかりでした。

そこで、日本人である自分は、日本のことをもっと勉強する必要があるということを感じました。そうした中、「筑波技術大学という大学が日本にもあるよ!」とNTIDの先生から技大について教えてもらったことをきっかけに技大の存在を知りました。

「日本にもそんな大学があるんだ!」ということと、技大の大学院に情報保障を専門に学べる専攻があることを知り、「技大に入りたい!」と思いました。手話言語について大学院の講義で学べるなんて最高にかっこいいと思いましたし、「情報保障」という概念が「支援」とか「奉仕」という考え方とはまた違って、よりこれからの時代に合っていると感じました。

 

Q2.学生生活はどうでしたか?

七夕の短冊を持って記念撮影
七夕の短冊を持って記念撮影

私は大学を卒業してから4年間働いた後に大学院に入ったので、戻ってきた学生生活!ということもあって、とにかく毎日が楽しかったです。大学院の仲間たちは皆それぞれ目標があって、話していてとても刺激になりました。聴者・ろう者・難聴者・盲ろう者、それぞれ文化が違うところもありつつ、その違いを時に楽しみながら学生生活を送っていた気がします。

大学院の講義もワクワクする内容ばかりでした。日本手話言語を言語学の視点から深く学べたり、大学の外へ出て他大学の障害学生支援室に見学に行ったり、内閣府の障害者政策委員会の傍聴に行ったりと、とても貴重な経験ばかりで、多くのことを学びました。


 

Q3.今後の目標を聞かせてください。

彦根城をバックに記念撮影
彦根城をバックに記念撮影

ルワンダのろう・難聴者の力になることが目標です。そのために、まずはルワンダの首都キガリにろう・難聴者が働くカフェをオープンする計画をしています。そのカフェでトレーニングを積んだろう・難聴者たちをルワンダ中の飲食店に輩出していくことによって、就労機会の拡大を目指します。

ただいまコロナ禍で渡航ができていない状況ですが、今はカフェで修行をしながら来るべきタイミングを待っています。

また、ルワンダでは2003年から義務教育は無償化になりましたが、まだろう学校のような特別支援学校は無償化の対象になっていなく、多額の学費のためろう学校に通えない子どももまだまだたくさんいます。

そこでもう一つの私の目標は、ルワンダのろう・難聴者の仲間たちと一緒に、まずは学費の無償化にむけたアドボカシー(政策提言)活動を行い、全ての子ども達が学校に通えるようにすることです。


 

Q4.技大生にメッセージをいただけますか?

大学院学位記授与式にて
大学院学位記授与式にて

私は、大学学部生時代からずっとアフリカで仕事をしたいと思っていました。

もし、私と同じように海外で仕事をしたいと思っている技大生がいたら、特に日本や自分の国のことについてたくさん勉強してください。

ルワンダのろう学校に赴任していた時に、「日本にはろう・難聴者はいないんでしょ。アフリカ人のろう・難聴者しか会ったことないもん。」と小さなろうの子どもに言われたことがあります。

私から「そんなことないよ!日本にもたくさんいるよ!」と教えたら、すごくびっくりしていたことが衝撃的でした。

ルワンダのろう学校の子どもたちは、もし日本から技大生が来てくれて、技大の話や日本の話をしてくれたら、きっと目を丸くして驚いて、大喜びすると思います。

ぜひ、興味がある方はいつかルワンダに来てください。


Profile

高橋彩加(たかはしあやか)さん

高橋 彩加(たかはしあやか)さん (大学院技術科学研究科情報アクセシビリティ専攻 2021年3月修了)

略歴:大学卒業後、青年海外協力隊へ。その後、NGO勤務を経て2019年より筑波技術大学大学院へ進学。現在はアフリカビジネス進出を支援する企業で、コンサルティング業務の補佐を行っている。
趣味:読書・旅行
好きな言葉:「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損々」

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