今だからこそ学生(大学生/高校生)に伝えたいこと ~本学大学院修了、そして民間企業を経て~
卒業生教員  

今だからこそ学生(大学生/高校生)に伝えたいこと ~本学大学院修了、そして民間企業を経て~

4月から産業技術学部産業情報学科に着任した辻田容希助教にお話を伺いました。今回は、聴覚特別支援学校(聾学校)から筑波技術大学に入学し、本学大学院を修了後、民間企業を経て本学に着任するまでの自身の経験と学生へのメッセージを語っていただきました。なお、自己紹介は「令和3年度 新任教員紹介」の記事にも掲載されておりますので、ぜひご覧ください。

Q1.本学の教員として着任した今の気持ちを教えてください。

天久保キャンパスの正門にて
天久保キャンパスの正門にて

学生時代の思い出が多く残っている本学で、教員として学生への教育、研究、大学の仕事に携わることができ、嬉しく思います。学生の頃の私を指導してくださった教職員の皆さんに対して心から感謝しており、その恩返しをすると共に本学の今後の発展に貢献したいと思っております。

また、本学で学業および研究に取り組んだ経験、企業に勤めた経験を活かして、聴覚障害学生が社会に出た時に、即戦力として活躍できるように育成していきたいと思っております。


Q2.もう10年前になると思いますが、本学を志望し、受験した時の気持ちを率直に教えてください。

私は、推薦入試で本学を受験しました。十分な情報保障が整っている本学で、機械工学を学びたい気持ちが強かったので、「合格する!」という強い気持ちで入試に臨みました。推薦入試の2~3週間前に全国聾学校卓球大会があり、部活動と受験勉強を両立するのが大変だったことを現在でもよく覚えています。

入試会場に到着すると、全国から集まってきた受験生がいて、プレッシャーに押しつぶされそうになりましたが、自分に集中し、持っている実力を全て出すようにしていました。

 

Q3.本学へ入学前と入学後のイメージで最も合っていたことと違っていたことを教えてください。

合っていたこと

聴覚特別支援学校(聾学校)と同様に教職員が手話・口話・筆談・資料などを用いており、聴覚障害者が情報保障を依頼せずに自然な形でコミュニケーションをとったり、一般大学と同様の感覚で講義を受けたりすることができることです。

違っていたこと

クラスがあることです。私は、本学の他に一般大学も視野に入れていましたが、その時に、大学は学生の数が多いので、高校までのようなクラスがないというイメージを持っておりました。しかし、本学はクラスがあり、1人の学生に対して、クラス担当・クラス副担当・AA(アカデミックアドバイザー)担当が付いており、きめ細かい指導を受けることができます。これが本学の強みの1つだと思います。

 

Q4.本学への進学を決める時に迷いはありましたか?

はい、迷いはありました。私は、高校の科目の中で「物理」が好きだったことから、当初は理学部物理学科に進みたいと考えていました。しかし、本学に理学部物理学科がなく、他大学になるため、十分な情報保障が整っていないことと、大学卒業後の就職を考えた時に、物理に関する科目である「4力学(材料力学・熱力学・機械力学・流体力学)」を学びながら就職後に役に立つ「モノづくり」の内容を学べる工学部機械工学科に進んでみてはどうかと助言をいただきました。

色々悩んだ末、十分な情報保障が整っており、機械工学を学べる本学産業技術学部産業情報学科システム工学専攻機械工学領域(現:先端機械工学コース)へ進むことに決めました。

 

3DCADでのモデル作成
3DCADでのモデル作成
ボール盤での穴あけ加工(機械加工法実習)
ボール盤での穴あけ加工(機械加工法実習)


Q5.今なら高校生らに対してどんなアドバイスをしたいですか?

高校生の皆さん、充実した高校生活を送っている中で、高校卒業後について色々悩んでいると思います。私からアドバイスするとしたら、自分が興味あること、将来やりたいことを見つけてください。それに沿って進路(大学進学など)が決まります。興味あること・やりたいことが明確であれば、大学などで有意義な時間を過ごすことができると思います。

また、大学は自分が興味ある、または、学びたい学問を深める場になります。内容が専門的になりますが、基礎知識を多く持っていると、専門的な内容を理解することができると思います。高校生の間に、基礎知識を多く取得するようにしてください。

 

Q6.大学生活全般的に最も記憶に残っていることをいくつか教えてください。

海外短期研修(アメリカ・中国・ロシア)

本学を志望した理由の1つが、本学には国際交流のプログラム(夏休みや春休みを利用した短期留学)があり、世界の障害者のための大学に通う学生と交流したいと思ったからです。大学1年生の時のアメリカ研修が、私にとって初めての海外でした。異文化に触れたり、学生と交流したりして、自分の視野が広がりました。ますます国際交流したいと思うようになり、大学2年生の時に中国、大学3年生の時にロシアの研修に参加しました。大学の講義の様子を見学したのですが、目的を持って講義に出席し、教員の話を真剣に聞いたり、ノートをとったり、積極的に発言したりしている学生が多く、刺激を受けました。帰国後に、さらに勉学に励むようになりました。

 

アメリカ研修
アメリカ研修
ロシア研修
ロシア研修


「放電加工」の研究および学会発表

大学3年のロシア研修で研究発表をする必要があり、機械工学領域の先生方それぞれの研究室に訪問し、専門分野や研究内容を聞きました。その中で出会ったのが「放電加工」です。“シャープペンの芯で金属材料に穴をあける” という普通ならありえないことが、放電加工なら可能である点に魅せられ、放電加工の研究に取り組みました。

大学院生(修士)の時に、学会で研究内容を発表する機会をいただき、他大学や企業の方々が参加している中で発表しました。かなり緊張しましたが、様々な方々と議論したり、有益な助言をいただいたりして、有意義な時間になりました。全国大会賞や論文賞を受賞することができ、充実した研究生活だったと思っております。

 

放電加工の研究
放電加工の研究
電気加工学会でのポスター討論
電気加工学会でのポスター討論


 

Q7.民間企業に就職前と就職後のイメージで最も合っていたことと違っていたことを教えてください。

合っていたこと

本学は、聴覚障害者にとって恵まれている環境であるのに対し、社会に出てからもこのような環境があるわけではないことです。就職したら、健聴者が多数を占めていて、音声でコミュニケーションをとっており、誰が何を話しているか分かりませんでした。これはイメージしていたどおりでした。

本学でのキャリア教育で身に付けた自分の障害や希望する配慮について説明する力を活かし、上司や他の社員と相談して、職場環境を整えていくことができました。

違っていたこと

研究テーマや解決方法などを考える時の観点です。大学での研究と違って、企業での研究は、企業の売上や利益に貢献できるかどうかというようなコスト面も含めて考える必要があります。また、解決方法についても自分だけができるような方法ではなく、担当者が変わっても使える方法であるかどうかを考える必要があります。企業での研究を経験できたことは、私にとって大きな財産です。

 

Q8.企業でどのような仕事をしていたかを教えてください。

研究開発部門で、空調の生産技術系の研究に取り組んでいました。自分が担当しているテーマにおいて、(1)実験装置・部品などの設計および発注、(2)実験の準備、(3)実験、(4)実験データの整理および分析、(5)考察、(6)資料作成、(7)報告というような仕事をしていました。その他、チームミーティングや担当テーマに関する会議に出席したりしました。

 

Q9.コロナ禍で大変な状況が続いていますが、高校生や大学生らに伝えたいことをお願いします。

放電加工の研究室にて
放電加工の研究室にて

新型コロナウイルス感染拡大で社会の状況が大きく変わりました。対面授業がオンライン授業に切り替わったように、今まで当たり前にしてきたことができなくなる、または、困難になるというような経験をしたと思います。

今回の新型コロナウイルス感染拡大に限らず、今後、AIや自動運転などの技術の発達、脱炭素社会、少子高齢化社会など社会の状況が大きく変わる場面が出てくると思います。目まぐるしく変化していく社会の状況に対応できる力を身に付けてほしいと思っています。

そのためには、常にアンテナを張って、情報をたくさん得たり、今まで経験していないことに挑戦したりするなどして、自分の知識量・経験値を増やすとともに、自分で色々考え、意見を持ち、発信できるようになってください。皆さんの今後が実り多いものとなりますよう祈っています。

Profile

辻田 容希

辻田 容希(つじた よしき) (産業技術学部 産業情報学科 助教)

出身地:兵庫県
趣味:ドライブ、旅行(国内と海外)、スポーツ(特に、卓球・ボウリング・スノボー)
好きな言葉:
「あきらめなければ必ず道はある。必ず。」

(豊田佐吉の名言)
「私は失敗したことがない。ただ、1万通りの、うまく行かない方法を見つけただけだ。」
(トーマス・エジソンの名言)

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