石原学長と保健科学部卒業生の懇談会を開催しました
卒業生対談  

石原学長と保健科学部卒業生の懇談会を開催しました

石原保志学長と卒業生との交流を目的に、保健科学部卒業生との懇談会を開催しました。今年度はオンライン開催となりましたが、和やかな雰囲気の中、現在の仕事内容や入社のきっかけ、コロナ禍での働き方の変化など、在学生や技大をめざす方にとって、将来をイメージしてもらえるような貴重な意見交換の場となりました。

※上写真の右上から時計回りに卒業生の森山さん・前田さん・岩渕さん・石原学長。

自己紹介

学長:本日はよろしくお願いします。ではまず、みなさんの自己紹介から。

前田:筑波技術短期大学の鍼灸学科を1999年に卒業した前田です。今は筑波大学附属盲学校で、あんまマッサージ指圧鍼灸の教員をしています。

岩渕:2004年に理学療法学科を卒業した岩渕です。筑波大学附属病院のリハビリテーション部で働いています。

森山:2017年に情報システム学科を卒業した森山です。今は日立産業制御ソリューションズという会社で採用担当として働いています。新卒採用担当として主に大学生や高専の方を中心に採用活動を行なっています。

技大に入学したきっかけ、動機

学長:技大に進学した理由やきっかけはなんですか?

岩渕:もともとスポーツに興味があり、スポーツに近い環境で仕事がしたかったからです。理学療法士に進める学科があったことから技大を選び、卒業後もご縁があって、筑波大の大学院のスポーツ医学専攻に進みました。

森山:私は地元の一般高を卒業後、ニュージーランド留学していた時に技大への進学を決めました。帰国後は就職を考えていましたが、障害者向けの求人サイトを見ると、なかなか難しそうで。そんな時に技大の情報システム学科を知り、就職率の高さに関心を持ちました。また、情報保障が整った環境で勉強できる点も良いなと思いました。

森山さん勤務風景
森山さん勤務風景

学長:就職率の高さが動機で入って、自分は就職したら採用を担当している。人生って面白いねえ。

森山:そうですね(笑)。実はその背景には、先生方が企業と密に連絡を取って、理解を促してくださっていて。採用を担当する側になっても、それはすごく良い体制だと思います。

前田:私は高校まで盲学校で学んでいたので、高校を卒業したらどこか違う所に行きたいと思っていました。でも、一般大学に進んだ視覚障害者の就職は厳しいとか、就職はできても会社でできることは限られてくる、といった話を聞いて。また、あんまやマッサージ、鍼灸の仕事に就いた先輩の話を聞くと、みんなちゃんと自立して、普通に生活をしている。やっぱり手に職をつけておいた方が良いんだなと考えて技大を選びました。また、見学時に、当時では珍しいパソコンが何十台も並んでいたり、図書館には蔵書の検索システムがあったりなど、最新の技術を備えた環境を目の当たりにして、技術短期大学への入学を決めました。


学長:その時にはもう、盲学校の教員になろうという目標はあったのかな?

前田:鍼灸学科の先生に鍼を打ってもらったら腰が治ったとか、友だちもすごく症状が良くなったとか、事例を聞き、体感する中で鍼やあんまが面白いと思うようになりました。たぶん、学生の中には「この職業が好きだ」とか「この仕事をやりたい」といった動機で来ていない人も多いと思っていたので、そんな人たちに自分のように何か実感させてあげられたらと、盲学校の教員を選択しました。

コロナ禍での働き方の変化

学長:新型コロナウイルスの影響で、働き方にはどんな変化がありましたか?

前田さん勤務風景
前田さん勤務風景

前田:3月の政府からの休校要請を受けて、5月までは私の勤める学校も全面的に休校となりました。その間はZoomなどを使ってオンライン授業を行ったり、メールで教材を提供したりして授業を進めていました。6月から授業が全面的に再開されて、丸一日のスケジュールで授業を行なっています。ただ、不安を抱える学生もいますので、自宅からオンラインで授業を受けられる環境も整えています。学生たちが例年と同じように学んで卒業してできるように頑張っているところです。

岩渕:仕事のやり方はやはり変わってきました。特に外来の患者さんの扱い方が大きく変わりましたね。もともとリハビリは、2・3割を外来で対応していましたが、現在は1割に満たないくらいまでセーブして対応しています。今後は入院時に、抗体検査に加えてPCR検査を行います。

森山:私は3月末からテレワークになり、一度も出社していません。採用活動は3月に広報解禁になりましたが、説明会もWebでの実施となり、面接についても対面では一切行なっていない状況です。

障害補償と周囲への障害の説明について

学長:今後、技大にどんな学部・学科ができると良いと思いますか?

森山:アクセシビリティ関係の学部・学科があると良いと思います。私が技大に入って良かったと思ったことは、障害に関する情報や知識を得たことによって「周りに伝えること」がしやすくなった点です。これもアクセシビリティの1つだと思いますが、人財を受け入れる企業も、障害者に対して必要な配慮をしていかないといけない。でも手探り状態の企業も多いので、障害補償やアクセシビリティをより理解できていると、会社としても役に立つのでは、と感じています。

学長:視覚や聴覚に障害がある人が自分の障害を客観的に理解して、周囲にも「どういう配慮があれば仕事ができますよ」と説明できると良いですよね。岩渕さんは健常者に囲まれて働いていますが、周囲への説明に苦労したり、自分で工夫したりしていることはありますか?

岩渕さん勤務風景
岩渕さん勤務風景

岩渕:モニターで管理されている患者さんに対しては、どうしても時間を要したりリスク管理が充分にできなかったりという場面は正直ありますね。ただ、それを踏まえた上で、ほかにやれる仕事があることを理解していれば良いのかなと。見えないものは見えない、できないことはできない、ということをはっきり伝えて、明確にした上で周りに理解してもらい、仕事をすることが大事だと思います。

学長:岩渕さんは、社会に出てそれができるようになったのかな? 大学やそれ以前にできるようになったのかな?

岩渕:はっきり主張できるようになったのは大学に入ってからですね。ただ、技大の中というより、学外の部活で人とコミュニケーションを取っていく中で、「ああ、障害のことを当たり前に言うことでうまくやっていけるんだな」と感じました。

学長:前田さんは、周囲に対する障害の説明について、学生にどういう風に指導していますか?

前田:健常者の方々は、見えない人の「何ができない」より「何ができるのか」という点に注目しているように感じます。そこで盲学校の中で必要になってくるのは、「じゃあ、どうしたらできるのか?」ということ。そうしたノウハウを教えて、社会に出た時に「こうすれば僕はできます」を言えるようにしないといけないと思っています。例えば、「パソコンを使った文書処理はできます。インターネットやメールの操作も問題なくできます」とか。自分がどんな手段を使ったら何ができるのかを、ちゃんと積極的に説明できるようになってもらうことを意識して授業しています。

技大の学生と技大をめざす人に向けて

懇談会中の石原学長
懇談会中の石原学長

学長:最後に、技大への入学を目指す人や学生へメッセージを。

森山:大学進学は一つの道ですが、ゴールではないと思います。将来自分がどうなりたいのか、その先を見据えて模索してもらえたらと思います。在学中の学生に対しては、障害補償と環境が整っている点は間違いなくメリットです。就職に関してもサポートが手厚い。でもそれに甘えるのではなく、効率的に視覚障害者への理解が進んでいる企業を見つける、といった手段としてもらえたらと思います。

岩渕:環境が良いことに甘えることなく、もっと外を見て動いてほしい、というのが学生への希望です。実習生を受け入れた中で、「学校ではどうやっていたの?」と聞くと、「拡大してもらっていた」とか「読書器を使っていた」と言うんです。でも、現場ではそういう環境は作れない。だから、自分のことを理解して対応策を考えるなど、自分なりの工夫をすることを学生のうちに身に付けてほしいです。

前田:これだけ素晴らしい学習環境が整っている学校は全国探しても他に無いと思います。その上で、せっかく入ったのならば「自分で進んで何かを調べる、何かをやる」ということを大事にしてほしいです。自分から進んで意欲的に学んでこそ大学生活だと思いますから。これから技大を考えられる方は、やはり実際に見学してみて、体感することが一番大事かな。

学長:もし進路に迷ってる学生がいたら、ぜひ技大を勧めてくださいね(笑)。みなさん、本日は貴重なご意見をいただき参考になりました。長時間ありがとうございました。

Profile

前田 智洋さん/岩渕 慎也さん/森山 夏気さん

前田 智洋さん/岩渕 慎也さん/森山 夏気さん

● 前田さん(左)
筑波大学附属視覚特別支援学校鍼灸手技療法科教諭。筑波技術短期大学視覚部鍼灸学科 1998年度卒業
● 岩渕さん(中)
筑波大学附属病院リハビリテーション部理学療法士。筑波技術短期大学視覚部理学療法学科 2004年度卒業
● 森山さん(右)
株式会社日立産業制御ソリューションズ勤務。筑波技術大学保健科学部情報システム学科 2016年度卒業