母校の先生になった卒業生
卒業生  

母校の先生になった卒業生

本学の産業技術学部で取得できる教員免許のうち、総合デザイン学科で取得できるのはこれまで高等学校教諭一種(工芸)でしたが、今年度より中学校、高等学校教諭一種(美術)も取得できるようになりました。これにより、美術の教職課程の科目の単位を取得して本学を卒業し、教員免許状を取得、教員採用試験を経て美術の先生を目指すことが可能になりました。今回のインタビューでは、本学総合デザイン学科を卒業し、現在奈良県立ろう学校で教員として勤めている山川さんに学生時代の話や教職について伺いました。 (同学部産業情報学科では中学校教諭一種(数学)、高等学校教諭一種(数学・情報・工業)の免許が取得可能です。)

聴覚障害者のための学部を選んだ理由と学生生活

——本学を選んだきっかけについて教えてください。
段ボールで作品を制作する山川さん
段ボールで作品を制作する山川さん

日本で唯一の聴覚障害者のための大学である筑波技術大学を知ったのは、私が中学2年生の時でした。

私は、もっと筑波技術大学の事を知りたいと思い、インターネットでホームページを調べたり、大学説明会(大阪で開催)・オープンキャンパス・筑波技術大学での教育相談に何度も参加しました。

参加していくうちに、大学の教育方針である

・障害特性に合わせた情報保障および障害補償能力の育成により、「伝わる・伝える」教育を提供する。
・自他の障害に対する深い理解を持ち、グローバルな視点から社会に貢献できる人材を育成する。
・幅広く豊かな教養を身につける教養教育と、高度な専門知識と技術を修得する専門教育を行う。

以上の3点に大変興味を持ちました。

必ず筑波技術大学に入学する、筑波技術大学でものづくりを学びたいという強い意志を持って、筑波技術大学の入試日に向けて受験勉強やデッサンの練習*などを毎日コツコツと準備を続けました。

※当時(2014年)の総合デザイン学科の入学試験ではデッサンを出題していました。

 

——在学中はどのような学生でしたか?

本学学位記授与式会場前にて、振り袖・袴姿の山川さん(2018年3月)私は、講義内容や課題作成などについて疑問を解消しないと前に進めない性格であるため、担当の先生の部屋をたずねて、とことん納得いくまで話し合いました。目標達成のためには自らすぐ行動する学生だったと思います。お忙しい中、本当にわかりやすく丁寧にご指導していただいた先生方には感謝しています。

講義以外では初めての一人暮らし(寄宿舎)の生活にとまどいながらもデザイン学科の講義、教職課程、サークル(茶道部)活動、寄宿舎生活全般など学校生活のスケジュールを立てながら、様々な集まりの場には積極的に参加しました。例えば、文泉こどもクラブ、八丈島ユニバーサルキャンプ、ボランティア活動などです。

奈良県立ろう学校(早期教育部から高等部)で16年間過ごしてきた私にとって、筑波技術大学の4年間は全国から集まった同じ聴覚障害のある同級生・先輩・後輩との交流により自分の世界や視野を広げる貴重な時間でした。

 

美術・工芸の魅力を教えることのできる教員を目指して

——教職課程で学んだこと、難しかったことなど教えてください。

教職課程で学んだ道徳教育指導法や教育心理学は、これからの教育現場では特に大切になってくる科目だと思いました。その中でも教育心理学は、特に印象に残りました。そこでは生徒、保護者、関係機関への対応方法やどのように関わっていけばよいのかを学びました。さらにスクールカウンセラーの方によるロールプレイという貴重な経験をさせていただきました。相手に対する姿勢と共感することの大切さを実感しました。

また、教職課程は、もともとの総合デザイン学科の卒業に必要な単位に加えて教職課程の単位を取得する必要があります。そのため、総合デザイン学科の授業で作品を完成させるのと並行して教職課程の講義を受講しなければならなかったので大変苦労しました。

しかし、その大変な時期でも同じ志を持つ仲間とディスカッション等を通して情報を共有したり、刺激を受けたりしながら切磋琢磨して成長することができました。

 

——卒業後教職の現場に出て気づいたことはありますか?
本学在学時代に授業を受ける山川さんの様子(付せんにメモをとっている。)
本学在学時代に授業を受ける山川さんの様子

生徒の様子を観察する力を高めることが大切だと気づきました。

特に朝の様子や1日の中で最初に会った時の様子をより注意深く観察することが生徒の状況を把握でき、生徒の小さな変化に気づくことができると思いました。いつもと違っている部分に気づくことができれば、より早い対応につながると思います。そしてまた、授業においても観察する力が大切です。生徒の理解度を把握しながら授業を進めるようにしないと生徒の学習意欲が低下してしまいます。

今私は、朝と授業時の生徒の様子を注意深く観察することを心がけています。さらに生徒の小さな変化に対応するために他の教員と連携し共通認識を持つことが重要と感じています。

 

——どのような教員を目指していますか?

様々な障害のある生徒が文字や言葉を使わなくても自分の思いを表現できる美術・工芸の魅力を教えられる教員を目指しています。生徒の思いを大切にする教員でありたいと思います。

 

将来教員を目指す受験生や学生に向けてアドバイスをお願いします

受験生の皆さんへ

アドバイスというより私が受験の時に心がけていたことをお話ししたいと思います。
基本的なことですが、(1) 体調管理 (2) 学習習慣をつける (3) 計画を立てる
以上の3点は教員になった今も継続しています。

そして、教員を目指す学生の皆さんへ

様々な交流の場や研修、サークルなど積極的に参加して何でも吸収しよう、学び続けようという向上心を持ち続けることが大事だと思います。謙虚に学び続ける姿勢は将来教員になってからもとても大事なことです。

Profile

作品に手を添える山川さん

山川 未那巳(やまかわ みなみ)さん (筑波技術大学産業技術学部総合デザイン学科 2018年3月卒業(9期生))

現在 奈良県立ろう学校にて勤務
・筑波技術大学 産業技術学部 総合デザイン学科 (工芸免許 取得)
・大阪教育大学 特別支援教育特別専攻科 (特別支援学校教員免許 取得)
・大阪芸術大学 (美術免許 取得)

出身地:奈良県
趣味:芸術鑑賞、読書、ものづくり
好きな言葉:初志貫徹

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