技大での経験と友達の支えが、今の前向きな自分をつくってくれた。
卒業生  

技大での経験と友達の支えが、今の前向きな自分をつくってくれた。

今回お話を伺ったのは、産業技術部産業情報学科を卒業し、現在は「高砂熱学工業株式会社」で働く森香緒里(もりかおり)さんです。高校卒業後の進路に悩んでいた際、本学の教育理念に興味を持ち、オープンキャンパスを通じて入学を決心したという森さんに、技大で過ごした学生時代のこと、そして現在の仕事と今後の目標を語っていただきました。

Q.技大に入学したきっかけは?

高校を卒業し、何をやりたいのか、何を学ぶべきなのか、自身の中では迷いと悩みの日々が続いていたとき、「筑波技術大学」の存在を母に紹介され、すぐさま本学の「世界的な視野で聴覚・視覚障害者に対する高等教育の充実と発展に寄与・・・」という教育理念に興味を持ちました。

オープンキャンパスに参加してみると、手話通訳や要約筆記を体験できたほか、キャンパス設備の充実さ、充分すぎるサポート体制に驚かされたことを覚えています。

幼少期に聾学校へ2年ほどの通学経験はありましたが、その他は健聴者と同じ学校に通っていました。周囲に自分と同じ障害を持つ人がいる環境で、活躍の場を見出していく希望に惹かれ、技大への入学を決心しました。朝の弱い自分でも、寄宿舎と校舎が近距離であったのも、魅力の一つでした。

Q.学生生活はどうでしたか?

同僚と談笑する森さん

中学・高校時代には、何気ないおしゃべりや外出で、放課後を友達と楽しむような毎日を送ることは多くはありませんでした。しかし、本学のキャンパスライフでは、これまでの人生では感じたことがないくらい、充実した密度の濃い、経験を味わうことができました。これまでは学生会や学園祭といったイベント実行委員も、障害を理由に諦めていましたが、友達と一緒に企画して作り上げる喜び、リーダーシップを発揮し周囲を巻き込む力など、身に付けられたような気がします。

社会人になり一人暮らしをする今でも、寄宿舎での生活経験は大きく役に立っています。部屋の片付けや洗濯といった親に任せていた苦労も、自分で克服することができました。

学問の面では、苦手としていた数学や物理、そして卒業研究課題においても、自分に対し熱心に指導してくださった先生方には感謝の気持ちでいっぱいです。当時は気付かなかった先生方からの教えが、今になって理解できることも多々あり、それだけ真摯に向き合っていただいていたのだと痛感しています。


Q.現在の仕事内容や普段の生活について教えてください

打ち合わせ中の森さん

現在、環境エンジニアリング企業である「高砂熱学工業株式会社」の人事部に所属しています。

社内に発信する通達の作成、外部機関から依頼される人事関連の調査資料の作成、保険手続に関連する各企業とのやり取り、といった業務を中心に担当しています。以前より「誰かの役に立ちたい」との思いも強かったので、少しでも周囲の力となっている実感が何よりも嬉しいです。

社内には、自分と同じように耳が聞こえない社員もいますので、手話での対話の機会がすごく楽しく感じます。手話で業務の出来事を説明するばかりでなく、些細な雑談でお互いが打ち解けていくので、仕事の疲れから解放され、ストレスも解消されていきます。また、発足したばかりではありますが、手話クラブも設立しました。本格的な活動はこれからですが、このクラブを通じて手話を多くの方に展開できたらと思っています。

休日は、のんびりとウィンドウショッピング、友達との外出、旅行で心癒されています。

Q.今後の目標を聞かせてください

普段は補聴器のおかげで、自分でも耳が聞こえないことを意識せずに生活していますが、連絡手段が電話のみ、災害や緊急時の情報が得られにくいなど、耳が聞こえないという現実に直面することがあります。

このような場合に、すぐに頼れる人が近くにいる、「頼っていいんだよ」と言ってくれる人がいると、非常にありがたいですね。まずは自身の所属部署、社内で聴覚障害についての理解を深め、様々な環境でも互いが充実するワークライフを実現していきたいと考えています。

将来に向かい、前向きな姿勢でいられるのも、技大で学んだ様々な経験、共にした友達の支えが今の自分をつくってくれたと思っています。

Profile

森 香緒里(もり かおり)さん

森 香緒里(もり かおり)さん (産業技術学部産業情報学科平成25年3月卒業)

出身地:福岡県
趣味:風景撮影  
好きな言葉:「自分のため」が「人の助け」になることだってある

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