「2021年デジタルの日」ロゴマークのデザイナーが語る、ロゴ制作秘話と技大での思い出
卒業生  

「2021年デジタルの日」ロゴマークのデザイナーが語る、ロゴ制作秘話と技大での思い出

今回インタビューしたのは、今年10月、デジタル庁が創設した「2021年デジタルの日」のロゴマークの制作者・岩田直樹さん。思いもよらず推薦された中から選ばれたという偶然から始まり、ロゴの制作過程、その後のお仕事の状況まで詳しくお話いただきました。また本学の卒業生でもある岩田さんの学生時代のエピソード、今後の夢や目標についても語っていただいています。

 

「2021年デジタルの日」ロゴの制作者として

——デジタルの日のロゴ選定の経緯について教えてください。
インタビューの様子
インタビューの様子

2021年デジタルの日のロゴは、インターネットでロゴを作成して欲しい人の推薦を受け付けていました。中間発表の時に友人から連絡があって、推薦された人を調べてみたら、有名なグラフィックデザイナーの中に僕の名前があって。初めは同じ名前の人がいるんだなぁと思いましたけど、あ、僕のことか、と(笑)。

 


——自分で応募したわけではなかったのですか?

はい、そうです。誰かが推薦してくれたようで、名前を見つけた時はとても驚きました。

 

——私にも、卒業生から「岩田君の名前があるよ!」と連絡がありました。

中間発表の後に、より多くの方が僕を推薦してくれて、得票数で1位になりました。その後、6月10日に開催された第一回デジタルの日検討委員会において、正式にロゴ作成者に決定しました。

 

——ロゴの作成過程を教えてください。
2021年デジタルの日ロゴ
「2021年デジタルの日」ロゴマーク

ロゴは7月半ばに発表するとのことだったので、作成時間はほとんどありませんでした。デジタル庁の担当の方からは、デジタルの日をつくった理由やコンセプトなどを伺いました。


——デザインに関する指示やリクエストはありましたか?

それはほとんどありませんでした。普段の仕事では依頼者の要望やさまざまな情報を元に作成していくことが多いので初めは困惑しましたが、僕に任せていただけるならやってみようと気持ちを切り替えました。


——プレッシャーはありましたか?

すごくありました。一億人が見るロゴなので、たくさん考えました。案を作って一晩寝かせておいてから、改めて見ても納得できるかどうか、というくらいかなり悩んでしまいました。

 

——仕事の依頼も増えましたか?

ありがたいことに仕事の依頼も増えました。メディアからの取材もありましたし、今日の対談もそうです(笑)。聾学校やデザイン会社からの講演も頼まれています。その中でも聾学校から校章作成の依頼があったのは嬉しかったですね。


——本学の学生たちにも話をしていただきたいですね。

ぜひ!

 

関連URL

「2021年デジタルの日」ロゴ決定 https://www.digital.go.jp/posts/FTYGXTUF

「2021年デジタルの日」 https://digital-days.digital.go.jp/

 

大学生活を振り返って

——印象に残っていることはありますか?
大学時代の学園祭での集合写真
大学時代の学園祭での集合写真

1つは学園祭です。学年や学科を超えて、多くの友人と関わりました。普段は仲のいい友達と過ごすことが多かったので、こんなにたくさん人がいたんだ!と改めて感じました。僕は広報部で、全体を統括するディレクターのような仕事を担当しました。人をまとめることはとても難しく、何もできなかったという記憶があります。

2つめは授業。外部の先生から現場の話を聞いたことが印象に残っています。


——本学は聴覚に障害のある学生が200人います。

みんな聞こえないけれど、手話を知らない人や、手話だけで話す人、さまざまだなぁと思いました。一番驚いたのが、日本手話。大学に入学するまで全く知りませんでした。

聞こえないことに誇りを持って生きている友人や先生との関わりを持つ中で、自分が聞こえないということを前向きにとらえられるようになったと思います。

 

——今でも友人とのつきあいはありますか?
大学時代の友人たちとの一枚
大学時代の友人たちとの一枚

仲の良い大学時代からの友人とは今でも連絡を取り合っています。コロナ禍でなかなか会うことはできませんが、チャットやテレビ電話で会話をしています。今回のこともとても喜んでくれました。

 

——外部団体にも積極的に参加されていたそうですね。

大学1年生の時にツイッターでつくばクラフトビアフェスタが実行委員を募集しているのを見つけて。聞こえない自分にできるのか悩みましたが、やってみたいという気持ちの方が強かったので応募しました。同じ実行委員だった筑波大生との関わりも増えました。

つくばクラフトビアフェスタの様子
つくばクラフトビアフェスタの様子
つくばクラフトビアフェスタのビール
つくばクラフトビアフェスタのビール


——聞こえる人達の中に入っていくことの抵抗感はありませんでしたか?

もちろんありました。でも僕には、デザインができるという強みがあったことが大きかったと思います。また、一度仲間に加えていただいてからは、期待を感じることもでき、自信をもって聞こえる人たちと関わっていけたと思います。

 

——抵抗感よりも自分の強みが上回っていたのですね。どのような方法でコミュニケーションをとっていましたか?

会話をするときは、口話や筆談、チャットを利用しました。人数が多くなると全てを把握するのは難しいこともありましたが、わからないときはわからないとはっきり伝えました。

 

今後の目標や夢について

——今後の目標や夢はありますか?

インタビューに答える岩田さん

大学生の時は、デザイナーになることが目標で、その後のことは考えていませんでした。デザイナーになった今は、デザインの力で、障害のある人とない人をつなぐ、距離が縮められたらいいなと思っています。

デジタルの日のイベントに向けて、手話通訳や文字通訳などのアクセシビリディに関するアドバイザーも担っています。社会との関わりの中で、聞こえないからこそ果たせる役割もあると思うので、これからも積極的に活動していきたいと思っています。

Profile

腕を組み佇む岩田さん

岩田 直樹(いわた なおき)さん (筑波技術大学産業技術学部総合デザイン学科 2018年3月卒業(9期生))

1995年和歌山県生まれ。生まれつき両耳が聞こえない。
筑波技術大学でデザインを学び、卒業後は茨城県にある広告会社でデザイナーとして働きながら、副業でもフリーランスのグラフィックデザイナーとして活動中。
耳が聴こえない当事者として、きこえない人ときこえる人のコミュニティなどの問題を解決したいと奮闘中。
きこえない人ときこえる人互いに関わる機会・場を提供する団体「ろうちょ~会」の運営に携わる。
「2021年デジタルの日」ロゴマークデザイナー。趣味はサウナに行くこと。