技大で研究・臨床! 奮闘するマレーシアからの大学院生!
在学生  

技大で研究・臨床! 奮闘するマレーシアからの大学院生!

技大には、海外から学びに来ている学生もたくさんいます。マレーシア出身の大学院生、アズリンさんは、大学院の授業や研究のほかにも医療センターで患者さんに施術をしたり、イベントや勉強会に参加したりと、忙しくも楽しい毎日を送っています。彼女はなぜ技大を選んだのか? そして技大で学んだことをどのように生かしていくのか? 今のつくばや技大での生活の様子も含めてお話を伺いました。

アズリンさんのMy Historyと“日本との出会いや経験”を教えてください。

アズリンさん施術の様子

私のママは、マレーシアでマッサージ店を経営しています。私もそうですが、ママも生まれながらに視覚に障害を持っています。ママは、苦労してマッサージ店を軌道に乗せ、ときには視覚障害者がマッサージを学んでいる訓練センターで教えたり、訓練センターの卒業生を自分のお店に受入れたりするなど、自分や家族、そして視覚に障害がある人たちのために頑張っています。

当初、私は中国でマッサージを学ぼうと考えていましたが、日本の先生達や母の勧めもあって、次第に日本へ行くことを考えはじめました。そして、国際視覚障害者援護協会のサポートを受けて2003年に初めて日本にやってきました。日本行きが決まってからマレーシアで日本語を習いはじめましたが、来日当初はほとんど会話や読み書きができませんでした。その後も、日本語と日本の文化を学んで、翌年から筑波大学附属盲学校で学び始めました。学校では日本のはり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の資格を取得するために頑張りました。

日本の生活や言葉にも慣れてきた冬、マレーシアではできない体験をしました。生まれて初めて雪を見たのです。早朝に目を覚まして窓から外を見ると、一面真っ白でした。私は興奮して、先生を起こしてカギを開けてもらい、素足で広場を駆け回りました。とても良い思い出です。勉強は大変でしたが、なんとか資格試験に合格しました。そして、ママのお店を手伝うためにマレーシアへ帰りました。

資格取得後、マレーシアへ戻ったアズリンさん。なぜ、再び日本で、そして技大で学ぶことを選んだのでしょうか?

入学式での一枚

マレーシアに帰国してからは、マッサージだけではなく、鍼施術もやっていました。しかし、患者さんに勧めても怖がってなかなか受け入れてもらえませんでした。そんな中、マレーシア国内ではマッサージに関する法律が大きく変わりはじめていました。将来的に大学で学んだり、認可された団体に所属したりしなければマッサージができなくなるかもしれないのです。

それから、ママは視覚障害者の団体や、彼らが大学で学べるプログラムを実現するために奔走しています。そこでママから言われたのは、これらの団体の認可や大学プログラムの実現には、学位を持った者が必要だということでした。悩みましたが、以前から知り合いだった技大の先生からも技大の大学院進学を薦められていたこともあり、一念発起して技大へ来ることを決意しました。

2度目の日本の生活環境は大きく変わりましたが、技大ではどのように過ごしているのでしょうか?

友人たちとの思い出の一枚

もちろん、大学院の授業や研究はありますが、とにかく楽しく過ごしています(笑)! 東京のときはラッシュタイムの電車に乗ってとても驚きましたが、つくばでは自然が多くて、とてもリラックスして生活することができます。食事は自炊をすることが多く、宗教上の理由でハラルをクリアした食材しか食べられないのですが、留学生や海外の研究者が多いせいか、つくばでも東京と変わらないぐらい手に入りやすいです。

また、友人もたくさんできました。大学院の仲間や医療センターで一緒に臨床をしている研修生、そして筑波大学の留学生とも知り合う機会がたくさんあります。休日は、彼らと回転寿司やカキ氷を食べたり、土浦の花火大会を見に行ったりもしました。

また、日本の文化に触れることも、楽しみの一つです。この前は大江戸博物館へ行ってきましたし、温泉へ行くこともあります。マレーシアでは冷たいシャワーの生活でしたが、技大の寄宿舎ではユニットバスの湯船でお湯につかるのが最高の癒やしです。最近は、朝食に日本食をつくっています。

大学院での研究は進んでいますか? また、医療センターでの臨床はできていますか?

研究発表の模様

研究のテーマは「足裏マッサージの効果の基礎医学的研究」です。マレーシアにいたときから足裏マッサージをやっていましたが、以前から、これらの刺激によってどのような生理的反応を起こすのか? という疑問を抱いていました。研究は、指導していただいている野口栄太郎先生のアドバイスもあり、動物とヒトを使った実験を行っています。動物の実験では、足裏に刺激をして心拍数と胃腸の反応を観察しています。ヒトの実験では、脚の血流と心電図、腸音を観察しています。

これらのデータの一部は、2つの学術集会で発表しました。研究で困っていることの一つは発表です。質問が普段の会話とは異なり難しい表現があったりするので、理解するのが難しいときがあります。そういうときは、聞き直したり、理解できた部分はなるべく自分で答えたりしています。2年生なので、授業は医療センターの臨床が中心ですが、今は論文をまとめる作業をしています。

臨床はとても楽しいです。月曜日はあん摩マッサージ指圧を、火曜日は鍼を中心に1日3、4人の患者さんを施術しています。あん摩マッサージ指圧と鍼は違った面白さがあります。あん摩マッサージ指圧はリズムがあって、それにあわせて踊っているような感覚です。一方、鍼は深く考えながら、一本一本に集中する感覚です。臨床で何よりも楽しいのが、患者さんとの会話です。茨城の方言がわからないときもありますが、日本の文化や生活を知ることができてとても勉強になります。何より、すべての患者さんが優しくて、とても大好きです。

最後に、将来の目標を教えてください。

大学院が終了したら、もう少し日本で臨床を学びたいと思っています。また、大学院の研究の成果をベースにして、患者さんを対象にして足裏マッサージの効果についても検討したいと考えています。そして、マレーシアに戻ったときには技大での経験を生かして、マレーシアのマッサージや視覚障害者の方々のためにママとともに頑張りたいと思っています。

Profile

ノライニ アズリンさん

ノライニ アズリンさん

出身地:マレーシア クアラルンプール
趣味:料理(日本食やスイーツ)
日本の好きなところ:人が優しい、良い意味でお互いを敬って気遣いをするところ、真面目で一生懸命、食事が健康的、四季が感動するものが多い、日本のお米 などなど

※プロフィールやインタビュー内容は、インタビュー実施時(2019年度)現在の情報です。