本学では高大連携プロジェクトの一環として、国内の自動車レースの最高峰であるスーパーフォーミュラ選手権シリーズに参加しているレーシングチームKCMGとスポンサーシップ契約を結んでおり、技術協力を行うと共に、様々な交流活動を行っています。活動範囲は学内だけにとどまらず、東京高専電子工学科の社会実装プロジェクトや卒業研究(データロガー、SFGOシミュレータ)にも課題を提供しています。過去の活動の様子は、こちらのページをご覧ください。
「技大ではフォーミュラカーによる学生交流を行っています!」
「ウィズコロナでの課外活動(スーパーフォーミュラレース観戦!)」
「アフターコロナでの課外活動(スーパーフォーミュラレース観戦!)」
今年度は、本学の先端機械工学コースで機械工学を学んでいる学生(秋田さん、大坪さん)と支援技術学コース(福祉機器工学領域)で福祉工学を学んでいる学生(小川さん)3名を課外活動として引率し、「モビリティリゾートもてぎサーキット」でレース観戦を行いました。鈴鹿サーキット(2025年3月7日~3月8日開催)で開幕したスーパーフォーミュラ選手権(全12戦)は、今回のもてぎラウンド(2025年4月19日~4月20日開催)が第3戦,第4戦となりました。写真1は、「スーパーフォーミュラシリーズもてぎラウンド」でサーキットを走行するレーシングカー(SF23、KCMG野中選手)が走行している様子です。

写真2は、サーキットコースの90°コーナーのスタンドからその走行を見つめる学生3人です。
写真3、写真4は、決勝レーススタート直前にコース上のスターティンググリッドでの福住選手(カーナンバー8)のマシンです。本学ロゴ(筑波技術大学)のステッカーは、サイドポンツーン(マシン側面)の下側に左右両方×マシン2台で合計4枚が貼られています。


レース中は限られた関係者のみピット内に立ち入ることが許されますが、決勝レースでは、KCMGのピット内で学生と共にKCMGの2台の熱い走りを見守っていました(写真5、写真6)。ピット内には、各マシン担当のエンジニアとメカニックが待機していて、エンジニアは複数のモニターに表示され刻々と変化する膨大な情報を見ながら状況を瞬時に把握し、最適なレース戦略を立て、ドライバーに無線で伝えます。タイヤ交換は、マシンが完全に停止してメカニックがタイヤ交換終了後、動き出すまでわずか6秒ほどの早業ですが、その様子をピットの内側から見ることができました。KCMGには女性や多くの外国人エンジニアもいて、多様性(ダイバーシティ)が感じられます。


レース観戦の合間にホンダコレクションホールでホンダのクルマづくりの歴史を学びました(写真7)。ホンダが創業以来作ってきたたくさんの車やバイクが展示してあり、自動車は基幹産業として日本の産業を支えてきたことが実感できます。世界最高峰のレーシングカーであるF1マシンはその当時の最先端技術を駆使して製作されており、普段目にすることがないような材料(CFRPやチタン合金)や構造(エンジン)などをじっくりと観察することができます。この日はイベントで当時F1のロータスホンダで活躍した中島悟選手が実際のレースで使用していたホンダエンジン始動デモが行われました(写真8)。


(※㈱ホンダ技研様 広報室より写真掲載許諾済み)
秋田さんの感想
私は昨年に続いての2回目の観戦となります。昨年はスーパーフォーミュラ(SF)についてほとんど知らない状態での観戦でしたが、今回は卒業研究のテーマとして取り組んでいる関係で、ある程度の知識を得た状態での観戦となりました。今回はピット内でマシンや整備の様子を間近で見させていただくことができ、とても良い経験になりました。スーパーフォーミュラでは、車体・エンジン等が指定されており、改造も制限がある為、その制限内でマシンの性能向上を目指していく必要があります。私の卒業研究では、表面加工の方針で進めています。その中でCFD(数値流体力学)を利用する機会が多いですが、最適な環境設定が重要になり、その設定に最も時間と手間がかかります。しかし、それでもその結果が正しいことを保証出来ない為、風洞実験や実機試験との比較も重要になります。CFDは上手く使えば大きな武器になりますが、サーキットコース上の複雑な環境(天候、気温、路面温度、風速など)を考慮し、それに近い環境設定を行った上で初めて意味を持つものだと実感した見学でした。
大坪さんの感想
大会を観戦して感じたことは、チーム全体で勝利を目指している姿が印象に残りました。ドライバーは長時間運転にもかかわらず集中力を切らさず最後まで戦う姿も凄いと感じました。それと同時にドライバーを見守るスタッフや整備士が誰一人も緩めず真剣な顔でモニターを見ているのでこれがチームという形なのだなと実感しました。僕は昔からバレーボールをやってきて、今年日本で初めて開催されるデフリンピックでは代表候補として日々の練習を頑張っています。バレーボールも個人よりもチーム力が重要な競技であることから、違う競技でもチームという大切さを改めて知ることができ良い思い出の一つとなりました。
小川さんの感想
栃木県にあるモビリティリゾートもてぎでレース観戦をしました。初めての体験でしたが、想像以上に多くの人が集まっていて、その中に子供連れや高齢者などさまざまな人たちが集まっていることに驚きました。特に、観客だけではなく、レースにかかわるスタッフや選手の中に多様な人がいたことが印象に残りました。女性の選手もいれば外国人のエンジニアもいました。モータースポーツが国際的で開かれた世界であることを実感しました。今回の体験でモビリティリゾートもてぎはいろんな人が楽しめる場であると感じました。とても良い経験になりました。
今回の課外活動のようにフォーミュラカーのデザインや構造などの最先端技術を目の前で観察することは、機械工学を学び、エンジニアを目指す学生にとって有意義な体験となることを再認識しました。内燃機関エンジンが発明されて150年以上経過しましたが、他の動力とのハイブリッド化が進みながら現在も進歩し続けています。技術の発展のためには、エンジニアのたゆまぬ努力とチームワークが必要であることを肌で感じるいい体験になったのではないかと思います。
(文責:下笠賢二)